神戸市の垂水漁港で魚の血が混じった水を不法投棄したとして、香川県漁業協同組合連合会(高松市)が廃棄物処理法違反容疑で書類送検された事件を受け、神戸新聞社に読者から疑問の声が寄せられた。「魚の血を海に捨てたら、なぜダメなの? 自然に返るんじゃないの?」。どういう観点から禁止されているのか、環境省や専門家に聞いてみた。(池田大介) 事件は神戸海上保安部が8月17日に送検した。香川県漁協連合会は5月30日~6月29日、出荷する養殖のハマチやブリを締めて、冷却していたコンテナ内の血や肉片を含む水を約10トン海に捨てた疑いが持たれている。神戸地検は10月20日付で高松地検に移送した。 同じような事件は他県でもあり、2022年には青森県内の漁港で、水揚げした養殖サーモンの血を大量に海に不法投棄したとして養殖業者の男性が青森県警に逮捕された。 環境省によると、魚を加工、出荷する過程で出る「血や肉が混ざった水」は産業廃棄物として扱われ、未処理で海に流す行為は1970年制定の廃棄物処理法で禁じられている。 ただ、同法の対象は産業廃棄物となるため、釣り人がバケツで少量を捨てるような行為はただちに違反とはならない。 兵庫県立人と自然の博物館(三田市)の頼末武史主任研究員(42)=海洋生物学=は、大量の投棄によって海洋の酸素不足を引き起こす可能性を指摘する。 有機物である血や肉を捨てると、分解する微生物が海中に増えて酸素濃度が低下し、魚が死ぬことがある。血や肉に病原菌が含まれている危険性もある。 環境省は「無計画に廃棄すると海の栄養量が増加し、赤潮の発生につながる恐れがある」とし、海洋環境保全の観点からも注意を求めている。 ◇ ◇ では、事業者はどうすればいいか。環境省の「漁業系廃棄物処理ガイドライン」に魚の血や肉に関する定めはないが、廃棄物である以上、処理施設を設けるか、もしくは処理業者に委託する必要があるとする。 兵庫県漁業協同組合連合会(明石市)は、水産加工場で生じた汚水は受水槽に集めてバクテリアで分解し、下水として流せる基準に調整して排水している。 今回送検された香川県漁協連合会は取材に対し、こうした浄化処理をする施設を設けていなかったと明かした。垂水漁港には下水道につながる排水口があり、手順を踏んで流すには労力がかかるため「時間を短縮しようと海に捨ててしまった」とした。 事件を受け、垂水漁港で締めた魚はコンテナに入れたまま出荷し、血が混じった水は取引先で処分するようにしたという。 ただ浄化処理を巡っては、浄化槽など大規模な設備を要するケースが多く、資金面やスペースの問題から思うように整備できないとの声もある。このため、技術開発も進んでいる。 汚水処理機メーカー「エコサイエンス」(宮崎市)は2025年から、水と血液を分離させる処理機の提供を始めた。血の混じった汚水が入った槽に凝集剤などを投入し、混ぜることで血の固形物と水に分離できる。処理機は船の上にも設置可能で、処理済みの水は海へ放流できる基準にまで浄化されるという。■情報をお寄せください 神戸新聞社は、読者の投稿や情報提供を基に取材を進める双方向型報道「スクープラボ」に取り組んでいます。身近な疑問や困りごとから、自治体や企業の不正告発まで、あなたの「調べてほしい」ことをお寄せください。スクープラボ特集ページ(ここをタップ)で投稿できます。皆さんと一緒に「スクープ」を生み出す場。ご参加をお待ちしています。