トク…トク…トク…。部屋のベッドに横たわりながら、鼓動が弱まっていくのを感じた。 「死んじゃうかも」 現在30歳の女性は約10年前、「白い錠剤」に手を出した。親に代わり、弟らの世話をする家庭で育ったヤングケアラー。孤独や苦しみから逃れるため、救いを求めた。ふわふわして気持ちが良くなり、つらい日常を忘れられる。命がけの「ごほうび」にのめり込んでいった。 薬物の過剰摂取、オーバードーズが若者を中心に深刻な問題となっている。国も対策に乗り出す中、関係者らへの取材を重ね、現状と課題を探った。売人が語ったのは「オーバードーズする人がいなくなることは100%ない」。それはなぜか。(共同通信=武知司、窪田湧亮) ▽育った環境は「普通じゃなかった」 女性が子どもの頃から、両親は頻繁に家を空けた。毎日の食事に困り、家の中を漁って食べ物や現金を探した。弟が学校から持ち帰った給食のパンを分け合い、空腹をしのいだこともある。