1989年11月に新興宗教団体・オウム真理教が引き起こした「坂本弁護士一家殺人事件」。 事件発生直後からオウム真理教の関与がささやかれていたが、神奈川県警の初動は極めて鈍いものだった。「事件か自発的失踪かは五分五分」と状況を見誤り、実行犯からの情報提供があったにもかかわらず遺体の捜索を半日で切り上げて発見できていない。 その背景には、多くの人が忘れている「時代の空気」が大きく影響していた。今だからこそ解き明かせる事件の真相を読み解く。 なぜ警察はオウム真理教に対して及び腰だったのか。 そもそも戦後日本の宗教政策は、戦前の国家による宗教統制への反省点を出発点としていたため、信教の自由や、宗教団体による自治を非常に重んじており、団体内でどのような活動を行っているかを把握することに制度的な限界があった。宗教への介入が、信教の自由の侵害と受け取られる可能性が高かったのである。そうしたことから「宗教団体には手を出しづらい」と思われていたようだ。