道路を埋め尽くすバイクと、鳴り響くクラクション。喧騒に包まれたベトナムの首都ハノイ。その中心部に近い、落ち着いた住宅街にある高級サービスアパートメント。その一室が、彼の仕事場だ。男性の名はヒエウ・ミン・ンゴさん。37歳。屈託のない笑顔と柔らかな雰囲気が印象的で、流ちょうな英語を話す。若々しく、IT業界で成功している好青年といった雰囲気を纏っている。しかし、かつて、彼には別の顔があった。2億人ものアメリカ国民の個人情報に不正アクセスし、その情報などを犯罪者に販売していたハッカーだったのだ。現在、彼はブラックハッカーから転身し、政府とも協力するホワイトハッカーとして再び名を轟かせている。禁錮13年の判決を受け、アメリカの刑務所で過ごした日々。なぜコンピューター好きだった少年が闇の世界に足を踏み入れたのか。「一番大事なのは心の平穏」と語る現在の姿に生まれ変わるまでの激動の人生を振り返る。そして今、日本をはじめ世界各地で相次ぐ不正アクセス事件を元ブラックハッカーはどう見るのか。GMO不正アクセス事件の犯人を「素人っぽい」という独自の分析を取材した。(バンコク支局 金井誠一郎)