被害急増のSNS型投資・ロマンス詐欺 静岡県警の「特捜班」、半年超で16件摘発

静岡県内外で被害が急増するSNS型投資・ロマンス詐欺などの捜査態勢を強化しようと、県警が2024年度に刑事部内で編成した「特別捜査班」が、24年6月から今月21日までの間に16事件を摘発したことが同日、県警への取材で分かった。通報や情報提供の端緒を得ると、その署に捜査員を重点配置して銀行口座の照会やスマートフォンの解析を進め、詐欺や組織犯罪処罰法違反、犯罪収益移転防止法違反、窃盗など各種容疑での逮捕につなげた。 逮捕、送検した容疑者は、金融機関の口座を不正に開設し、犯罪収益を暗号資産などに替えてマネーロンダリング(資金洗浄)を行う「マネロン役」が多くを占めた。SNSを駆使するため、被害者とのやりとりが全て非接触だったのが共通の手口。同時に、マネロン役と「指示役」ら別の人物との間の連絡には秘匿性が高いアプリの機能を悪用し、通信履歴などは消去されていた。 ロマンス詐欺の中には、恋愛感情を悪用する手口以外にも、英語を交えたコミュニケーションで親近感を抱かせ、日本で会う約束を交わした上、不測の事態を装って解決金などを要求してくる手口もあった。こうした「連絡役」はマネロン役とは別人が担っているため、スマホの解析と追跡など犯罪グループの実態解明にはハードルも高かった。送金行為にネットバンキングが多用される傾向が強い中、金融機関の協力を得て口座の照会作業を中心に進めた。 ただ、被害金は最終的に指示役ら上位者に流れてしまっているとされる。摘発した“末端”容疑者に対する損害賠償訴訟は全国的にみれば既に存在するが、「マネロン役らの多くは生活苦などで手を染めていて、そもそも返済能力がない」(捜査幹部)実情があるという。 県警は幅広い年齢層へ「会ったことがない人物にSNS上で金銭援助やもうけ話を出されたら詐欺で、絶対に断って」と呼びかける。口座の不正開設や他人への譲渡・売却行為について、組織犯罪対策課は「全て犯罪に該当する」と強調。新たな被害者と加害者を生まないよう「啓発と捜査を引き続き強化していく」とする。

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