斎藤知事「心ない誹謗中傷しないで」 立花氏への呼びかけは明言せず

昨年11月の兵庫県知事選以降、SNSでの真偽不明の情報発信や誹謗(ひぼう)中傷がやまない。18日には、それがつらいと周囲に話していた前県議が死亡した。斎藤元彦知事は22日の定例記者会見で、「心ない誹謗中傷などはしないで」と訴えた。一方、前県議に関する根拠のない情報を投稿した政治団体「NHKから国民を守る党」の立花孝志党首に対して呼びかけるとは明言しなかった。 亡くなったのは、斎藤知事らを内部告発した元西播磨県民局長(故人)の文書について調べる県議会調査特別委員会(百条委員会)委員だった竹内英明・前県議(50)。捜査関係者によると、県警は自殺とみている。 竹内氏をめぐっては、立花氏が「逮捕される予定だった」などといったSNS投稿をした後、県警本部長が否定。立花氏は、書き込みや動画を削除した。 「立花さんの言動は受け入れられるものなのか」という記者の質問に対し、斎藤知事は「一つ一つのものを全て把握していくことは難しいが、心ない誹謗中傷などは行わないでほしい、と改めて強く申し上げたい」と答えた。 知事選で立花氏は、当選を目的とせずに斎藤知事を応援するとして立候補。街頭演説や討論会で、竹内氏について「告発文書を作って(斎藤県政を)転覆させるようにした」などと主張した。そうした内容や竹内氏を「騒動の主犯格」と名指しした別の投稿者の動画が拡散し、中傷も広がった。元県民局長は生前、「告発文書は1人で作った」と報道機関に配った文書で説明していた。 記者からはこの日の会見で、「なぜ立花さんの名前を挙げてやめろと言わなかったのか」という質問も出たが、斎藤知事は「全ての県民やSNSを利用している方に、誹謗中傷や人を傷つける行動は決して許されないと強く申し上げたい」と述べるにとどめた。 ■SNS条例は24年7月から検討中 斎藤知事が再選直後から中傷対策として口にしてきたのは、SNS条例の制定だ。22日の記者会見でも「条例制定に向けた議論を進めていく」と言及した。 条例は2025年度中の制定を目指し、有識者会議やパブリックコメントを経て内容を固めていくという。ただ、SNSの個人間のやりとりについて、斎藤知事は「個人の発信に行政がどこまで介入できるか難しい観点もある」とも述べた。 条例制定の動きは斎藤知事の1期目からあったものだ。23年10月の記者会見では、公立図書館跡地の活用方法に関して「誤った内容がSNSを通じて数十万人に拡散した」とし、「SNS上の誹謗中傷などに対応するための条例化の検討も含めて、対策の強化をしっかり進めていきたい」と述べていた。 県人権推進室によると、県はこの知事発言を受けて24年7月、SNS上での部落差別などの人権侵害を防ぐ条例制定に向けた有識者会議をすでに設置している。 ■「臆測で人を傷つける書き込み、やめましょう」 兵庫県警は22日、公式X(旧ツイッター)に「推測・臆測で人を傷つけるような書き込みをするのはやめましょう。たとえ、それが正義感に基づくものであったとしても、刑事上・民事上の責任が生じる場合があります」などと投稿した。

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