「すごくエキサイティング! これでやっとアメリカがまともな国になるよ」 興奮した面持ちで語ってくれたのは、ノースキャロライナから来たという20歳の白人男性コナーさんだった。 1月20日月曜日午前8時、気温マイナス7度という危険なほどの寒さにもかかわらず、ワシントンの中心部のストリートは数万人のトランプ支持者で埋めつくされていた。急遽室内に変更になった大統領就任式を一目見ようする人々が、ビューイングエリアとなった「キャピタル・ワン・アリーナ」に入ろうと行列しているのだ。その列はアリーナ入口を先頭に、チャイナタウンを突っ切って延々と伸び続け、最後尾がどこかさえもわからないほどだ。 多くは真っ赤なニットのMAGA(Make America Great Againの略、熱烈なトランプ支持者はMAGAと呼ばれる)のロゴが入った帽子をかぶり、やはり真っ赤なマフラーを巻いている。行列の横には、ありとあらゆるデザインのトランプTシャツや帽子、ペンからぬいぐるみまでのグッズを売る露店がずらりと並ぶ。 ペンシルバニア州から来たという白人女性スーザンさんは、星条旗柄のニットの「トランプ帽」に赤いマフラー姿で、 「一生に一度の記念すべき日だから思い切り楽しむわ」 と満面に笑みを浮かべた。 まさにMAGA支持者にとってこの日は人生最大の記念日だ。まず8年前とは喜びが違う。一度は否定されたMAGAとトランプを返り咲かせるために、一緒に戦って勝ち取ったという自信と自負がある。だから彼らは、まるでこのワシントンの街を征服したかのように、意気揚々としている。 しかし筆者が異様に感じたのは、支持者以外の一般市民の姿がストリートから消えてしまったことだ。いくら休日でこの寒さとはいえ、犬の散歩をする人の1人や2人いてもよさそうなものだが、どの街角ですれ違うのも、スタバでコーヒーを買っている人も、必ず真っ赤なMAGAニット帽をかぶっているか、トランプの旗を持っている。 ワシントンはリベラルの街ニューヨーク以上に、民主党が圧倒的に強い場所だ。その街がMAGAに占拠される中、どうやらリベラルは家にこもって息を潜めているようだった。それはトランプ氏の「ホワイトハウス奪還記念日」を象徴するような光景だった。