にやけるトニー・レオンの底の知れぬ恐ろしさにゾクゾクする。巨万の富を得てもなお衰えぬ欲望、金と地位への執拗(しつよう)な執着。詐欺で成り上がった正体の知れぬ化け物の気持ち悪いたたずまいを、力むことなく、まるで楽しむように飄々(ひょうひょう)と演じている。 「ラスト、コーション」の時のシビアで潔癖で情熱的だったトニーがこんなに気持ち悪くなっちゃって。でも選べない。どっちも好き。 どっちも好きと言えばアンディ・ラウ。やっぱり今日も少年の目のまま。決して捕まらない詐欺師を逮捕することに人生を懸ける熱血警察官を、抱きしめたくなるような情けなさと哀愁とスタイリッシュさで演じる。情けない顔がサマになる俳優は良い。ショーン・ペンもそう。 「インファナル・アフェア」以来、20年ぶりのトニーとアンディの共演に、心が大暴れして忙しいのです。(桜坂劇場・下地久美子) ◇桜坂劇場で上映中