韓国検察が尹錫悦大統領を起訴 現職初、1度も取り調べできないまま

【ソウル=桜井紀雄】韓国検察は26日、「非常戒厳」宣布を巡る内乱首謀などの罪で尹錫悦(ユン・ソンニョル)大統領(64)を起訴した。検察は当初、尹氏の勾留を延長して追加の捜査を進める計画だったが、裁判所が2度にわたって延長を認めなかった。検察は尹氏への取り調べを一度も行えないまま、決断を迫られることになった。 現職大統領が刑事事件で起訴されるのは初めて。大統領には不訴追特権があるが、内乱罪は例外だ。 検察は27日に尹氏の勾留期限を迎えるとみていた。沈雨廷(シム・ウジョン)検事総長は26日、全国の検察幹部を集めた会議を開き、尹氏を拘束したまま起訴するか、釈放して在宅捜査に切り替えるかを巡って論議し、方針を決定した。 尹氏は、捜査機関「高位公職者犯罪捜査処(公捜処)」が15日に身柄を拘束し、19日に逮捕した。だが、尹氏は公捜処に内乱容疑の捜査権はないと主張し、取り調べにほとんど応じてこなかった。公捜処は予定より早い23日に起訴権を持つ検察に事件を送致したものの、検察は2月6日まで延ばせると見込んでいた勾留の延長が認められない想定外の事態に見舞われた。 検察はこれまで、尹氏と内乱を共謀したとして、金竜顕(キム・ヨンヒョン)前国防相はじめ軍や警察の幹部らを起訴し、尹氏の内乱首謀容疑を裏付ける供述や証拠を確保してきた。一方で、尹氏側は、国会での戒厳解除要求決議の妨害や政治家らの拘束を指示したとの幹部らの証言を全面的に否認している。 今回、検察が十分な捜査を行えないまま起訴したことで、今後の公判を維持していく上で難航が予想される。釈放しても、捜査不足を認めたとして世論の批判の高まりは不可避だった。公判に向けて尹氏側と激しい攻防が展開されそうだ。 尹氏側の弁護団は26日、勾留期限は既に過ぎているとの解釈を主張し、「即刻釈放すべきだ」と訴えた。

シェアする

  • このエントリーをはてなブックマークに追加