■常識的に考えても信じがたい事件 国内の大手銀行で、貸金庫にあった多額の顧客資産が盗まれた。盗んだのは、当該銀行の行員という衝撃的な事件が起きた。 それに対して、頭取は「信頼・信用のうえに成り立つ銀行ビジネスの根幹を揺るがす」不祥事と説明した。その通りだろう。多くの人が大切なお金を銀行に預けるのは、銀行がそのお金を大切に保管してくれると信じられるからだ。その信用がなくなると、銀行の仕事は成り立たない。まさに、銀行は信用の上に成り立っているのだ。 その信用を揺るがす事件は、一人の女性行員が2つの支店で貸金庫からの顧客資産を窃取して発生した。しかも、4年半もの間、一人の行員による貸金庫から多額の窃盗が続いていた。一般常識から考えると、にわかに信じがたい事件だ。 ■たった一人で14億円もの資産を盗んだ 本来、銀行は、業務を複数の行員が確認し、それを管理者が厳格に管理する体制になっているはずだ。それにもかかわらず、一人の女性行員が4年以上にわたって、10億円を上回る多額の資産を盗み続けた。結果から見ると、2つの支店では、不正を防ぐ制度設計が確立されていなかったということだ。 今回の問題が、銀行に対する社会の信頼感を棄損する可能性はありそうだ。少なくとも、貸金庫を安心して使うことは難しくなるかもしれない。わが国の銀行にとって重大な問題であることは間違いない。 1月16日、三菱UFJ銀行は「元行員の不祥事に関する対応状況・再発防止策等について」を公表した。そこには、約4年半の間、一人の行員が多額の顧客資産を窃取し続けた実態が記載されている。 被害の内容は、練馬(旧江古田支店含む)と玉川支店の貸金庫で、顧客が保管した現金や金(ゴールド)などだった。1月10日時点で判明した被害総額は約14億円。被害にあった顧客数は、当初の約60人から約70人に増加した。被害総額などは今後の被害内容の確認によって変動する可能性がある。