元ヤクザ、少年院出身、“入れ墨”を消してリングに…平成ボクシングの異端児・大嶋兄弟の現在「撮りたくなる魅力が2人にはあった」

平成ボクシング史に名を刻んだ大嶋宏成(50歳)と、先を歩く兄の背中を追った弟・大嶋記胤(のりつぐ)(48歳)。元ヤクザ、少年院出身、入れ墨、覚せい剤で逮捕……傷のある過去をもつ兄弟がボクシングによって導かれた更生の道。ノンフィクションライター・栗田シメイ氏が、その軌跡を取材した。【NumberWebアスリート転身特集/全3回の最終回】 引退後、大嶋宏成の体重は30キロ近く増加した。 年間600杯ラーメンを食べ歩き、体が毎日アルコールを求めた。強面の刑事やヤクザ役でドラマや映画、音楽のプロモーションビデオの配役も与えられた。舞台では主役を務めたこともあり、映画出演作も14を数える。だが、いずれも心の底から熱くなれる世界ではなかった。 「30歳で引退して、以降の6年間は生きているのか死んでるか分からないような生活。リングの上での注目を浴びた感覚は麻薬のようにずっと体から消えない。自分が何がやりたいか定まらなくて、考えるのが嫌で酒に逃げていました。悶々とした感情は膨らむ一方で、その解決策が一向に見つけられなかった」 今でこそセカンドキャリアという言葉があるが、当時はまだそんな概念が希薄だった。宏成の言葉で気付かされたが、ボクシング界はよりその傾向が顕著でもあった。夜な夜な彷徨うように街を歩く日々で見つけた答えは、気心の知れた仲間が集まる場所を作りたい、という原点に立ち返ることだった。

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