2019年、長崎市青山町の住宅団地内の私道通行を巡り、所有する会社と住民との対立が表面化。訴訟にまで発展した問題は24年1月、地元自治会が所有権を取得する形で和解が成立した。それから1年。今月、バリケードを設置して通行料を脅し取ろうとしたとして暴力団幹部らが逮捕された。不動産の専門家は、私道に関するトラブルを回避するために管理状況の確認を促している。 「私道をふさがれると抜け道がなかったため、金になりそうな場所として狙われたのだろう」。日本不動産研究所(東京)企画部の幸田仁主幹はこう推測する。古い住宅地や私道の所有者が代わるタイミングでは起こり得る話だという。 大阪府警は今月21日までに、福岡、佐賀両県の暴力団幹部の男ら4人を組織犯罪処罰法違反(組織的恐喝未遂)の疑いで逮捕した。 住民らによると、昨夏ごろ、府警から住民側に連絡が入り、聞き取りやバリケードの設置現場の捜査などが進められた。暴力団幹部らの逮捕を受け、住民からは「やっぱりか」との声が漏れた。当時、暴力こそなかったが、強い口調で買い取りを迫られるなど、怖い思いをした人も少なくなかったという。住民の1人は言った。「突然やって来て、金を要求するなんて普通の人はしないでしょう」 青山町の私道を巡っては、元々の所有者の会社整理に伴い、18年に容疑者の1人が社長を務める福岡の会社が取得した。住民側に買い取りや通行料を求めたが断られ、19年10~11月、道路の一部にコンクリートブロックのバリケードを設置する事態が発生。住民が半世紀近く維持・管理してきた生活道路の封鎖騒動は、テレビのワイドショーでも大きく扱われ、全国的に注目を集めた。 その後、住民約90人が原告となり、所有する会社に対し、通行妨害禁止などを求めて提訴。最終的に所有権を地元自治会に移す内容で和解した。 今回の私道は、通行できる権利「通行地役権」を設定した契約書が存在せず、会社側は「所有者が通行料を求めることは問題ない」と主張していた。住民側もその点は理解する。自治会役員の1人は「いずれは所有者と話し合う必要があった」との認識を示した。 青山町のように関わる住民が多いケースは珍しいとみられるが、大なり小なり住宅に接する私道は各地に存在する。幸田氏は「まずは自宅が接する道路が公道か私道か、管理状況はどうなのかを確認しておいた方がいい」と指摘。私道の場合、「古い住宅地などは当初の開発業者の所有だったとしても、業者が廃業して連絡ができなくなったり、所有者が途中で代わることで分譲当初の通行に関する『合意』が引き継がれていなかったりするケースもある」という。 共同で使用する私道では、維持・管理や不具合などについて、普段から住民同士で話し合えるような地域コミュニティーの維持も重要だとした。