フィリピンの風俗街で売春観光の後に生まれた子供を捨て去った生父の遺伝子(DNA)を追跡し、養育費を受け取るオーストラリアのある市民団体が、外信の注目を集めている。香港サウスチャイナ・モーニング・ポスト(SCMP)によると、非営利団体「アンヘレス・リリーフ」は10年間フィリピン性売買観光後に生まれた子供を捨てた生父、いわゆる「バッドファーザー」を追跡して養育費を受け取るプロジェクトを進めた。 このプロジェクトは、国際性犯罪者を逮捕する英国の非政府組織(NGO)「私は彼らの叫びを聞いた(Hear Their Cries)」の設立者である弁護士アンドリュー・マクラウド氏のアイデアから始まった。 マクラウド氏は米国カリフォルニアで連続殺人犯を捕まえた「黄金州の殺人鬼」裁判からインスピレーションを得た。マクラウド弁護士はSCMPに「数十年前に確保したDNAで連続殺人犯を追跡できるなら、子供たちを捨て去った生父も追跡できると考えた」として「そうすれば、生父に子供の養育費を要求できる」と話した。 一時、アンヘレスは米空軍基地近くの村として栄え、風俗街になった。米軍は1990年代初めに撤収したが、風俗街は依然として残っている。SCMPによると、アンヘレスには毎年全世界から数十万人の「性観光客」が集まる。フィリピンでは売春は違法だが、関連産業は盛んに行われている。「アジア観光で児童性売買を終えよう」という団体によると、フィリピンには80万人の性労働者がいるが、この内少なくとも10万人が児童だ。 社会福祉士のパム・ヤンコさんは性労働者のほとんどが貧困家庭の女性だと伝えた。アンヘレスの乳児死亡率はフィリピン平均の3倍だ。栄養失調などが蔓延しているためだ。同地域では小学校卒業者もほとんどいないほど、教育環境も劣悪だ。 子どもの生活が劣悪であるため、西側諸国の裁判所は、生父を捜しだそうとする団体の活動に同情的な立場で協力している。これまでボランティアなどがDNAサンプルの7割から生父を見つけることに成功した。 団体によると、生父に連絡すれば、大半は子供がいるという事実を否定したり、敵対的な反応を見せたりするという。アンヘレス・リリーフの創立者であるマーガレット・シモンズ氏は「生父の1割だけが自発的に子供を扶養する」と吐露した。社会福祉士のヤンコさんは「ここに来る男性のほとんどはフィリピン女性を『セックス人形』として扱っている」と批判した。 それでも一部は生父から養育費を受けることに成功した。性労働者であり薬物依存毒者である母親のもとで生まれたマリヤさん(15・仮名)は幼い時期を街で物乞いしながら過ごした。DNA検査の結果、生父は50代後半のオーストラリア人であることが分かった。生父は月に約250豪ドル(約2万5000円)をマリヤさんに送っている。ただ、マリヤさんとは絶縁を希望しているとSCMPは伝えた。 シモンズ氏は「プロジェクトを拡大する計画がある」としながらも「DNA検査以降、法的手続きに費用・時間が多くかかる」と困難を吐露した。また「我々は途方もない時間とエネルギーが必要だ」として「生父なしに切迫した人生を続けていかなければならないい子供たちが数千人もいる」と話した。