’24年12月、西川口駅東口付近のエステ『小百合』が摘発された。禁止区域で性風俗店を経営したなどとして、風営法違反の疑いで中国人の経営者と従業員の2人の女性が逮捕され、同月9日にさいたま地検に身柄が送られた。「リラクゼーションマッサージ」とうたって、主にホームページなどを通じて客を集め、10月から12月7日までの約2ヵ月半で750万円ほど売り上げがあったという。 この摘発は「西川口に違法風俗はなくなっていなかった」ということを明らかにした。かつての〝違法風俗の街〟からの再建をすすめてきた西川口に、今度は中国系の違法風俗店ができていたのだ。これは、取り締まりを強化し法律や条例で規制しても、浄化はなかなか思うようにいかないということを示している。 西川口といえば、かつて「NK流(西川口流の略、いわゆる本番行為を提供する店のこと)の聖地」として知られ、200軒以上もの違法店舗(本サロ)が営業していた場所である。30分8000円~40分1万円ほどで若くてかわいい女性の本番サービスが当たり前だった西川口は、客としては驚くほどコスパが良い〝夢のような色街〟だった。全盛期に何度も足を運んだが、駅の周辺は本サロだらけ。店の外観や看板はド派手で、赤、緑、黄、ピンクなどのカラフルな外観の店舗が無秩序に並ぶ〝ハチャメチャな街〟だったのだ。 しかし、周辺環境の悪化を懸念する地元住民の声に押され、次第に取り締まりが強化される。’04年に埼玉県警により「風俗環境浄化重点推進地区」に指定され、悪質な客引きや店舗の取り締まりなどが積極的にされるようになった。そして、’05年に行われた大規模摘発によってNK流の本サロはほぼ一掃されて、’07年初めまでに大半が廃業した。 ◆払拭できない「裏風俗」のイメージ 相次ぐ取り締まりにより風俗店の客足が減るにつれ、一般の飲食店や水商売店の客も減少。性風俗街の印象が強いため、駅周辺でも商業店舗のテナント入居が進まず、一時期は空き店舗だらけのゴーストタウンのような街に様変わりした。だが、’08年に西川口駅西口中央通りで開催された埼玉県のB級グルメ大会で川口市の〝キューポラ定食〟が優勝したのを機に、地元の人たちは「B級グルメの街」として街おこしを始めた。以降、外国人住民の増加とともに、中華料理をはじめ、アジア各国の料理店が増えていく。 浄化以降、〝表向き〟は違法風俗店はすっかり姿を消していた。駅西口の一区画には風営法を遵守する〝合法で健全な優良風俗店〟が集まっている。再興を目指す風俗関係者たちが、かつての違法風俗のイメージを変えようと「安くて良質な安心して楽しめる風俗」を作ろうと努力していた中での摘発だった。 歴史を振り返ると、一度風俗街として栄えた場所は、摘発されても時間を置いて復活する傾向がある。かつて〝ちょん間街〟として賑わった北九州市小倉の京町は、’09年と’15年に摘発され、女性を斡旋していたほとんどの建物(スナック)は取り壊された。だが’17年4月の夜に行くと、ポン引きのおばちゃんが現れ「兄ちゃん、遊んでいかない? いい子いるよ」と声をかけられた。建物は消滅しているのに、遊び自体は健在だったことに驚いたものだ。これは、客がこの場所に風俗があったと知っており、摘発されたことを知っていても「まだあるかもしれない」と思い、たびたび訪れる人がいるために起きる現象である。 〝買いたい人〟がそこを訪れる限り、〝売りたい人〟がそこに現れるのは、必然ともいえる。摘発された違法中国エステが繁盛していたことは、西川口が持つ「全国的な知名度を持った違法性風俗の街」というイメージが、簡単には払拭できないことを物語っている。 有料版『FRIDAY GOLD』では、生駒氏が実際に西川口に潜入取材! 体験ルポなど、裏風俗の実態に迫っている。 取材・文・写真:生駒明