特殊詐欺でだまし取った現金を持ち逃げした「出し子」に報復したとして、警視庁組織犯罪対策特別捜査隊が、特殊詐欺グループの指示役とみられる沖縄県石垣市、職業不詳の男性被告(27)=窃盗罪で実刑判決、控訴中=を傷害と逮捕監禁容疑で再逮捕したことが捜査関係者への取材で判明した。容疑者は事件当時、別の特殊詐欺事件で保釈中だった。 警視庁は、容疑者が保釈中に特殊詐欺グループと連絡を取り、グループの指示役として出し子への報復をしたとみている。 捜査関係者によると、容疑者は、警察官になりすましてキャッシュカードを盗むなどの特殊詐欺事件に関与したとして、2022年2月~23年1月に警視庁と千葉県警に窃盗容疑で4回逮捕され、その後起訴された。 この時は、盗んだカードを使って現金を引き出すなどの役割だったとされる。関与した特殊詐欺事件の被害額は追送検された分を含めて5件で約4000万円に上るという。 容疑者は東京地裁立川支部での初公判後の23年3月に保釈されたが、今年3月に懲役4年10月の実刑判決を言い渡され、一時収監された。量刑を不服として控訴し、再び保釈が認められていた。 再逮捕容疑は、実行役5人と共謀して24年11月12~13日、埼玉県川口市で無職男性(25)を車に乗せて手足を結束バンドで縛り、東京都江戸川区のホテルなどで監禁。手の指を刃物で切りつけたり、顔を殴ったりして顔の骨を折るなどの重傷を負わせたとしている。 被害男性は24年10月下旬ごろ、X(ツイッター)で「金に困っています」などと投稿し、闇バイトに応募。同31日に東京都立川市の60代男性宅に警察官になりすまして訪問してキャッシュカード4枚をだまし取ったという。引き出した現金約230万円を持ち逃げしたとされる。 持ち逃げに気付いたグループのメンバーは「なんで金を持ち逃げしたんだ。あと1回仕事をすれば許してやる」などと脅迫。怖くなった被害男性にもう一度、出し子を請け負うことを承諾させて、指定した車に乗せたところで暴行を加えたという。 警視庁は今年3~5月、傷害と逮捕監禁事件の実行役の男性5人を逮捕。うち4人が起訴されている。今回再逮捕された容疑者が5人に指示したとみられる。【長屋美乃里】