続出するプライバシー問題と社長会見で改めて考える「これからの個人データの扱い方」

有名芸能人に関する不祥事報道や有名スポーツ選手に関連した加熱報道など、ここ最近さまざまなトピックに関連する報道で「プライバシー」という言葉を頻繁に見聞きするようになった。いずれの問題においても、このプライバシーをはじめとした人権問題に対して、組織や個人がどのように向き合っているかが議論の根幹にある。人権問題では主要先進国からは遅れているといわれている日本だが、個人データに目を向けた場合はどんな状況だろうか。 企業や組織からの個人データの不正な持ち出しや悪用は後を絶たず、データプライバシーに関するモラルは、必ずしも向上しているとはいい難い。デジタル化された個人データや生成AIが、ビジネスの中心的役割を果たすようになる今、社会全体としても企業や組織としても、また個人レベルでも、データプライバシーの問題を改めて考えるタイミングにきたといえる。 ■諸外国と日本の間にある人権の確保や侵害に対する温度感の差 契約金や出演料、望まない仕事内容などを含むタレントの情報を同業他社への転職時に不正に持ち出したとして、タレントキャスティング会社の元社員が逮捕された。昨今、転職先での営業活動のために顧客情報を不正に持ち出したといった事案が続発している。中には、保険代理店を通じて契約者情報が複数の保険会社に漏洩し営業活動に利用されていた、複数の電力会社で社員が小売電力事業者の顧客情報を盗み見して営業活動に利用していたなど、別会社が所有する顧客情報を自組織でのビジネスに利用しようと複数企業の従業員が画策したといった、にわかに信じがたい事象もいくつかの産業分野で発生している。 マイナンバー制度の番号が配布され始め、個人情報保護法の改正も話題になった2015年から今年で10年を迎える。マクロの視点では、法規制に関して新たな課題が出てきているのではないだろうか。個人情報の目的外利用の禁止、罰金の上限引き上げ、事故発生時の報告義務化など、改正を経て制度としては年々より厳格なものに変化している。しかし、一個人が刑事告発されるケースはあっても、組織の管理責任が法的に厳しく問われるケースは国内では皆無に等しいのではないか。制度が形骸化しているようにも見受けられ、実効性の観点で改善の余地が大きいといえる。 一方、ヨーロッパ連合(EU)や米国を中心とした一部諸外国では、法規制が厳格になるだけでなく、個人データが漏洩した際の管理責任を企業や組織に厳しく問う方向にシフトしている。特に、個人データの主体の権利が脅かされないための対策に不備があった、事故が発生しているにもかかわらず監督当局や主体に対する報告を怠ったり虚偽の報告を行ったりしたということに対して、告発や高額の罰金が課されるケースが続発している。先進的な一部諸外国と国内では、人権をはじめとした権利の確保や侵害に対する温度感の差が現れている。

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