福岡のケア・トランポリン事業、逮捕の元県議が議会質問後に急拡大

高齢者の健康づくりの一環として福岡県が推進する「ケア・トランポリン運動」事業を巡り、運営関係者から賄賂計2800万円を受け取ったとして、県警は17日、当時福岡県議だった片岡誠二容疑者(58)を収賄容疑で逮捕した。捜査関係者への取材で判明した。片岡容疑者は当時、ケア・トランポリン運動を推進するように県議会で複数回質問しており、県警は便宜供与の見返りに現金を受け取ったと判断した模様だ。 高齢者の健康づくりの一環として福岡県が助成する「ケア・トランポリン運動」事業について、収賄容疑で逮捕された片岡誠二容疑者は県議だった当時、積極的に県議会で質問するなど推進を後押ししていた。議会質問後に急速に県内で普及が進んだ経緯があり、県警が詳しく調べている。 福岡県は、県民の健康寿命を延ばそうと2019年度から「ふくおか健康づくり県民運動」を始めた。ケア・トランポリン運動は柱となる「運動習慣の定着」事業の一つとして採択され、教室の開催費などが全額補助された。 だが、県内で全額補助事業として開催された教室は、19年度は12市町67教室▽20年度は17市町86教室――にとどまり、関係者が期待したような広がりはなかった。新型コロナウイルスの感染が流行したことなども影響したとみられる。 普及に「黄色信号」がともる中、片岡容疑者は20年10月、県議会決算特別委員会で「高齢者の健康が損なわれつつある現状を考えると、十分な感染症対策を取りながら、安全に楽しく運動のできる環境を整え、再開することも必要だ」と切り出し「来年度に向けて(ケア・トランポリンを)どのように推進するのか」と質問した。 県幹部は「実施予定がない市町村などに電話や訪問などで来年度の教室開催を働きかけてまいります」と答弁。片岡容疑者は「ケア・トランポリンは本県発祥の運動。これを全県下に広め、全国に発信し、元気な高齢者が生き生きと暮らす福岡県に」と要望した。 その後、全額補助での開催件数は急増。21年度は29市町180教室▽22年度は31市町183教室▽23年度は33市町199教室――に上った。19~23年度の5年間で県が支出した教室開催などの補助金は計3億8554万円に上る。 当時、片岡容疑者から度々、進捗(しんちょく)状況を聞かれていたという県幹部は毎日新聞の取材に「県議は県民の代表であり、重みが違った」と振り返った。【佐藤緑平】

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