【ソウル=桜井紀雄】韓国の憲法裁判所は25日、「非常戒厳」宣布を巡り、弾劾訴追された尹錫悦(ユン・ソンニョル)大統領の罷免の可否を決める弾劾審判の最終弁論を開き、尹氏が最終の意見陳述を行った。尹氏は弾劾訴追で職務停止となり、国民に任された仕事ができず、「申し訳なく、胸が痛んだ」と謝罪の言葉を述べた。尹氏の意見陳述が終了後に結審する見通しだ。 戒厳宣布は「大統領の統治行為だ」と合憲性を主張してきた尹氏は改めて正当性を訴えるとみられる。弾劾訴追した国会側は、戒厳宣布によって「国民が命を懸けて守ってきた憲法秩序を踏みにじった」と強調し、尹氏の罷免を求めた。 韓国ではこれまで盧武鉉(ノ・ムヒョン)、朴槿恵(パク・クネ)両元大統領が弾劾訴追されたが、大統領本人が憲法裁に出廷し最終意見陳述を行うのは初めて。弾劾審判を締めくくる最終意見陳述は、国会側、尹氏側ともに時間制限なく行われた。 盧、朴両氏の前例から見て結審から約2週間で結論が示される可能性が高く、今回は3月中旬ごろに決定が言い渡される公算が大きい。罷免されれば、60日以内に大統領選が実施される。 棄却の場合は原則、職務への復帰が定められている。ただ、尹氏は内乱首謀罪で逮捕・起訴され、刑事裁判も同時に進んでおり、当面、勾留が続く見通しだ。罷免でも棄却でも、刑事裁判への影響は避けられない。 尹氏は昨年12月3日に戒厳を宣布し国会などに一時軍部隊を投入。国会は同月14日、与党議員の一部も賛成し弾劾訴追案を可決した。弾劾審判の弁論はこの日を含め計11回行われ、戒厳時に部隊を指揮した当時の司令官ら16人が証人出廷した。