韓国の尹錫悦(ユン・ソクヨル)大統領が25日、憲法裁判所弾劾審判で提示した任期短縮改憲と責任総理制度は弾劾認容と早期大統領選挙の可能性が現実化される状況で投じた政治的賭けという評価だ。憲法裁判官に弾劾棄却の名分を提供し、職務復帰時に国政の混乱を最小化して時間を稼ぎ、李在明(イ・ジェミョン)共に民主党代表に対する大法院(最高裁)宣告も引き出すカードを取り出したということだ。 尹大統領はこの日の最後弁論で「残余任期に執着せず、改憲と政治改革を最後の使命と考える」としながら「大統領は対外関係に集中し、国内問題は首相に権限を大幅に譲る」と話した。尹大統領が就任後、公式席上で改憲に言及したことは今回が初めてだ。法曹界のある要人は「弾劾審判において、憲法裁判官は世論に強い影響を受ける。尹大統領も嫌いで、李在明代表も嫌いという中道保守層にとって、任期短縮改憲は有意味に作用するだろう」と見通した。 尹大統領のこの日の最終陳述は、謝罪で始まり12・3非常戒厳宣言が「国民への呼びかけ」である点を強調することから出発した。特に尹大統領は「呼びかけ」という単語を9回も使って今回の戒厳が野党の立法独走の現実を赤裸々に知らせようとする警告性の戒厳だったことを強調した。尹大統領は既に掲げた戒厳の不可避性を繰り返しながらも、弾劾と関連した法的争点である国会議員逮捕指示などに対しては「本当にとんでもない主張」と言いながら一つひとつ反論した。特に郭種根(クァク・ジョングン)前特殊戦司令官らの「議決定足数が満たされていなかったので議員を引きずり出せ」という証言に対しては「議決定足数が満たなければ、これ以上入れないように阻止すべきで、引きずり出せというのは常識に反する」と述べた。あわせて「大統領の2時間半の非常戒厳と野党の2年半の連続弾劾のうち、どちら側が相手の権能を侵害したものか」とし、戒厳に比べて野党の暴走のほうが深刻だったという点を印象付けるために注力した。 尹大統領の最終陳述では戒厳宣言の後、5回の国民向け談話で一度も登場しなかった「国民統合」という単語が4回登場した。尹大統領は「改憲と政治改革の過程で国民統合を成し遂げることに努力を全力投球する」としながら「改憲と政治改革が正しく推進されれば、その過程で分かれて分裂した国民が統合されるだろう」と述べた。尹大統領が非常戒厳に関連して「混乱と不便をおかけした点に対して申し訳なく考える」とし、先の談話には登場しなかった「陳謝」という表現を使い、「私を批判して叱責する国民の声も聞いた」とし、自身の支持者ではない国民に対しても初めて言及した。また、戒厳事態で拘束された将軍など公職者に対しても直接謝罪ではなかったが「内乱追求工作によっていま苦難を強いられているのを見て胸が張り裂けるようだ」とし、遺憾を表わした。 尹大統領はこの日の憲法裁判所の決定に関連し、承服には直接言及しない代わりに、「日程がおす中での弾劾審判だったが、忠実な審理に努めてくださった憲法裁判官に深く感謝申し上げる」と述べた。 与野党の評価は交錯した。与党「国民の力」の申東旭(シン・ドンウク)首席報道官は「国の危機状況で大統領として苦悩に充ちた決断をせざるをえなかった背景を改めて国民の前に率直に弁論した」と述べた一方、野党「共に民主党」の趙承來(チョ・スンレ)首席報道官は「内乱首魁の尹錫悦は最後まで破廉恥なうそとごり押し主張で弾劾審判情を汚した」とした。