災害時、SNSで飛び交うデマに惑わされないために知っておきたいこと。被災地入りしたボランティアがデマにより窃盗グループと疑われたケースも……

2016年の熊本地震ではSNS上で「ライオンが動物園を抜け出して町を歩いている」という情報が広がり、2022年の静岡豪雨ではドローンから撮ったという現地の被害の写真が拡散された。いずれも偽情報だ。 なぜ災害時にデマは生まれ、拡散されてしまうのか? 現地のリアルなSOSを発信する活動を続けているジャーナリストの堀 潤さんと、社会学者の関谷直也さんのおふたりに話を聞いた。 * * * ■SNS時代はデマとの闘い? 地震国であり台風や水害に毎年襲われる災害大国・日本。 昨年、元日に起こった能登半島地震は各地に甚大な被害をもたらし、石川県珠洲市の一部など、いまだ水道が復旧していない地域も残されている。 インターネットが生活のインフラとなった現代は、災害と同時に誤情報や偽情報、フェイク画像もSNSで拡散され、結果、大切な情報がデマに紛れてしまう事態も起こる。 非常時において、私たちはどのような態度で情報に接すればよいのだろうか。 2月に新書『災害とデマ』を刊行したジャーナリストの堀 潤さんはこう話す。 「災害時には社会が持ついろいろな問題が凝縮して現れます。さまざまな災害現場を取材した経験をまとめておきたいと思い、本のテーマにしました。 取材していると、メディアの暴力性や権威主義的な姿勢に気づかされる瞬間があります。メディアの中にいる立場だからこそ、自分から変えたいという気持ちはずっと持っていました。 そのためにNHKを退職し、市民メディアを立ち上げ、模索してきました。みんなで解決策を考えたいと思いながら書いた本です」 堀さんがNHKで報道番組を担当していたときに東日本大震災が起こった。日々、ニュースの現場に立ち、自身もTwitter(現X)で情報を発信。2012年に市民参加型ニュースサイト『8bitNews』を立ち上げ、13年にNHKを退局した。 その後はフリーランスのジャーナリストとして、東京電力福島第一原発事故を巡る検証やドキュメンタリー映画の製作、生成AIによる「認知戦」の現場取材などを続けてきた。 災害が発生すると堀さんは自分のLINE IDをSNSで公開し、「情報発信の支援が必要な人は連絡をください」と被災者に呼びかける。 「LINEには短時間で多くの切実な反応が返ってきます。そこから連絡をくださった人と直接やりとりし、どの情報が今、耳を傾けるべきSOSなのかを精査します。必要だとわかれば一緒に発信をしながら、私が現場に急行する。 玉石混交の情報の渦の中から、どれが本当のSOSなのかを見つけ、速やかに発信し、救援・支援につなげる――今の時代に必要なのは、市民の皆さんと一緒につくる、こうした報道の形だと信じて、この12年間、活動を続けてきました」

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