【バンコク稲田二郎】タイ政府は、少数民族ウイグル族40人を中国に送還したと発表した。いずれも中国の弾圧から逃れてタイに入り、2014年から入国管理施設に拘束されていた。ルビオ米国務長官は強く非難し、迫害の恐れがある国への送還を禁じる国際義務に違反する恐れを指摘した。 タイと中国は今年、国交樹立50周年で、協力関係を拡大させる中、2月27日に送還が実施された。現地メディアによると、40人は中国新疆ウイグル自治区カシュガル市などに送られた。 タイのプンタン副首相兼国防相は、送還は中国側の要請で実現したと説明。タイ政府は声明で「彼らは深刻な犯罪に関与したわけではなく、帰国後は家族と普通の生活が送れるとの保証が中国側からあった」と強調した。 中国から逃れた亡命ウイグル人組織を束ねる「世界ウイグル会議」によると、40人は14年にタイ南部に密入国して逮捕されたグループの一部。国交樹立50周年の今年、送還の恐れがあったため、同会議は1月に緊急支援を求める声明を発表していた。 ルビオ氏は2月27日、今回の送還を「最も強い言葉で非難する」との声明を発表。ウイグル族が中国で「ジェノサイド(民族大量虐殺)」に遭っているとし、送還後に人権が守られるかどうか、継続的な検証が必要との認識を示した。中国外務省の林剣副報道局長は同27日、送還の正当性を主張し「人権を隠れみのにして中国の内政に干渉することに断固反対する」と述べた。