「人質司法」と呼ばれる日本の司法制度を変えるための集会が3月4日、東京都千代田区の参議院議員会館であった。 検察官による証拠改ざんや違法な取り調べが明らかになった事件の被害者が「密室の取り調べで悪いことができない仕組みを作ってほしい」と訴えた。 ●身柄を拘束され自白を迫られる「人質司法」 人質司法は、被疑者や被告人が無罪を訴えたり黙秘したりすればするほど「人質」のように身柄を拘束され、自白を強いられる状況となっている日本の司法制度を指す。 人質司法は冤罪を生む大きな要因だと批判されており、昨年には長年死刑囚として扱われながら裁判のやり直しで無罪が確定した袴田巌さんの冤罪事件があったばかりだ。 集会は「人質司法サバイバー国会」と名付けられ、2023年11月に続いて2回目の開催となった。 この日は「袴田事件『後』 司法はどう変わるべきか?」をテーマに、これまで捜査機関の違法な取り調べによって冤罪に巻き込まれた当事者らが人質司法の恐ろしさを語った。 ●大川原社長「逮捕があまりにも簡単になされている」 検察官によって証拠のフロッピーディスクが改ざんされた郵便不正事件の被害者で元厚生労働事務次官の村木厚子さんは「幸いにも私は自白しなかったが、検事に『認めないと罪が重くなる』と脅されたり、嘘の情報を教えられたりしました。共犯者とされた人の半数は『村木さんがやりました』という調書にサインしていましたが、プロとアマチュアが闘うとそういうことになります。自分も知らなかったが、みなさんにもぜひ知ってほしい」。 外為法違反容疑で逮捕された後に起訴が取り消された横浜市の「大川原化工機」社長の大川原正明さんは、逮捕後に「なぜ認めないのか?」という知人の調書を見せられながら責められた経験を紹介。「基本的に逮捕することがあまりにも簡単にされている。それを報道機関が騒ぎ立てるが、それだけはやめるようにしていただきたい」と訴えた。 ●角川氏「取り調べの人質司法は巧妙化している」 東京オリンピックの汚職事件をめぐって逮捕・起訴され、226日にわたって身柄を拘束された出版大手「KADOKAWA」元会長の角川歴彦さんは、起訴された日に拘置所の職員から「今日から囚人として扱います」と言われた当時を振り返り、「推定無罪が通用する世界ではない。私の実感からすると、取り調べの人質司法は巧妙化して、むしろひどくなっている」と語った。 業務上横領罪で起訴後に無罪が確定した大阪市の不動産会社「プレサンス・コーポレーション」創業者の山岸忍さんは、逮捕によって銀行からの融資が止まることを避けるために容疑を否認しながらも社長を辞任した経緯を明かし、「検察官にはもっと経済の勉強をしてほしい。経済感覚や経済合理性がゼロどころかマイナスの検察官に軽々しく経済事件を扱ってほしくない」と述べた。