福井事件再審、きょう初公判 弁護団「犯人とする証言つくられた」

福井市で1986年3月に起きた女子中学生殺害事件で、懲役7年の判決が確定し服役した前川彰司さん(59)の裁判をやり直す再審の公判が6日、名古屋高裁金沢支部(増田啓祐裁判長)で始まる。弁護団によると、検察側は有罪を主張する意向を示している。審理はこの日に終える予定で、7月にも判決が見込まれる。 再審は「無罪を言い渡すべき明らかな新証拠を発見したとき」などに開かれる。弁護団によると、公判に向けた協議で検察側は、新たな証拠は出さない方針を示したといい、有罪主張を維持しても無罪の公算が大きい。 事件が起きたのは86年3月19日午後9時半ごろ。福井市営住宅の一室で留守番をしていた中学3年の女子生徒(当時15)が顔や胸など数十カ所をめった突きにされて殺された。87年3月に殺人容疑で逮捕されたのが前川さんだった。 前川さんは一貫して無罪を主張。犯行を裏付ける物的証拠はなく、「事件の夜、血が付いた前川さんを見た」といった知人らの供述が信用できるかどうかで司法の判断は割れた。 90年に福井地裁は無罪としたが、95年に名古屋高裁金沢支部が懲役7年の有罪判決を言い渡し97年に確定。前川さんは2022年に2度目となる再審請求をし、24年10月に認められて検察側も異議を申し立てなかった。 再審公判は、過去の裁判で採用された供述調書や証人尋問などの証拠を前提とした上で、新たな証拠を調べて判決が言い渡されることになる。 ■「証言つくられた」弁護団、公判で無罪主張 弁護側は、前川さんを「犯人」とした知人らの証言が「つくられた」ことを示すための証拠を出し、無罪を主張するという。先立つ再審請求審では、検察側が新たに開示した捜査報告書から、目撃証言とひもづくテレビ番組の放送日が別の日だったことが判明した。また、逆転有罪判決が出た控訴審で、検察側の証人として「血のついた前川さんを見たのは事件の夜だった」と述べた男性に刑事が贈った結婚祝いの袋なども提出している。 再審開始決定は、警察官らが供述を誘導したり、証人らが迎合して虚偽の供述をしたりした可能性を指摘。弁護側は改めてそのことを裏付ける証拠を公判に出すという。 一方で検察側は、捜査機関が作成したものであっても決定文が引用していない証拠については同意しない意向を示したと弁護団は明かす。こうした姿勢について弁護団は「非常に矛盾した態度だ」と批判している。 再審公判は6日午後2時に開廷。早期の無罪判決を最優先し、弁護団は証拠を絞り込んで裁判に臨むという。逮捕から38年、有罪判決の確定から27年が過ぎた前川さんの意見陳述も予定されている。(椎木慎太郎)

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