青森県八戸市の「みちのく記念病院」の元院長らが逮捕された入院患者間の殺人の隠蔽(いんぺい)事件を巡り、県と八戸市は7日、同病院に対しそれぞれ改善勧告による行政指導を行った。県は▽県の許可を受けずに病室の用途を変更して使用している-と指摘。市は▽一部の医師の出勤簿と勤務実態が整合しない▽複数の病室で定員が最大2人超過した状態で患者を入院させている-の2点について改善を求めた。 県と市は同日午後、市保健所に同病院の責任者を呼び出し勧告文書を手渡した。責任者は市民や患者に対し、おわびの言葉を述べていたという。 2月14日の逮捕を受け、県と市は同病院に対し19、26日の2度、医療法に基づく臨時の立ち入り検査を実施。関係書類の確認や職員への聞き取りなどを行い、医療提供体制に問題がないか調べていた。今回の改善勧告は検査時点で不適正だった三つの状況について改善を求めるもの。病院からの改善状況の報告期限など具体的な内容は今後の検査に影響があるとして明らかにしていない。 宮下宗一郎知事と熊谷雄一市長がそれぞれ県庁と八戸市庁で記者会見を開き説明した。一般的に病院に対する行政指導の実施は公表されないが、今回は社会的影響の大きさや公益性を考慮し特例的に公表した。 宮下知事は「事実上のイエローカードで、今後行政指導を繰り返したり、あるいは次が行政処分となる可能性もある。勧告に従うかどうかに基づいて次の展開がある」と話し、病院側の今後の対応次第で改善措置命令や開設許可取り消しといった行政処分を行う可能性も示した。 改善勧告は市に権限がある行政指導の中では最も重い。熊谷市長は「適正を欠く事実が明らかになったことは残念。速やかに改善を求め、改善状況をしっかり確認していく」と語った。 改善勧告を受けたことについて、みちのく記念病院は東奥日報の取材に応じなかった。