【トランプ2.0 現地リポート】 現地時間4日火曜日に行われたトランプ大統領の施政方針演説を、NYタイムズ紙は「好戦的なスピーチ」、英ガーディアン紙は「虚偽に満ちた演説」と報じた。特に注目されたのは、政権の目玉である移民政策に関する虚偽表現だ。 ファクトチェックで「明らかな嘘」と指摘されたのはこの発言だ。 「バイデン前大統領は国境を開放し、不法入国者を各地に送り込んだ。コロラド州オーロラやオハイオ州スプリングフィールドのような町が移民に占領され、破壊された」 また、「過去4年間に流入した2100万人の多くは、殺人犯やギャングだった」という発言は、「誤解を与える」とされた。 ■アメリカの庇護を求めた移民を… 実際の入国者は1400万人で、うち犯罪歴のある12万人近くが入国時に逮捕されたが、大半が犯罪者との証拠はない。 政権はこうした犯罪者の強制送還を掲げるが、実態は大きく異なっている。 特に批判されているのは、キューバのグアンタナモ基地への重罪人の移送だ。ここには9.11同時多発テロの容疑者がいまだ拘束されているが、アメリカの法律が適用されないため、拷問など人権を無視した扱いが行われているとみられる。これまでに170人以上の不法移民が移送されたが、その多くは犯罪者ですらないと、人権団体が抗議している。 もうひとつ問題視されているのは、出身国でない第三国に送り込まれる不法移民だ。彼らを拘束しても友好国以外に返すのは難しい。そこで、約300人の一時的な受け入れを承諾したのがパナマだ。輸送機で送られた彼らの多くは、アジアやアフリカ諸国の出身者だった。中には迫害を恐れ亡命を希望した、キリスト教徒のイラン人の女性や、タリバンの手から逃れてきたアフガニスタン人の家族もいると、NYタイムズは伝えている。 彼らは危険なジャングルの端にあるキャンプに拘束されていて、取材も弁護士との面会も禁止されているため、その実態は限りなく不透明だ。 庇護を求めてアメリカにたどり着いた移民たちが、見知らぬ国に送られ拘束されるという、人権侵害を大きく超えたホラーが進行している。 (シェリーめぐみ/ジャーナリスト、ミレニアル・Z世代評論家)