「死んでもこんな目に遭うのか」 立花孝志氏を告訴した竹内・元県議の妻の一問一答

政治団体代表の立花孝志氏に対する刑事告訴が受理され、竹内英明前兵庫県議=1月に死亡=の妻が8日、会見を開いた。主なやりとりは次の通り。 -竹内氏が亡くなって半年がたった。今の心境は。 「あっという間で、余り記憶がないのですが、もう半年たったのだなと。何も整理がついてませんし、まだ受け入れられていない。信じたくない気持ちもあります」 -竹内氏は県議という仕事にどう向き合っていたか。百条委員会への思いは。 「とにかく間違ったことが嫌いだと自分でよく言っていて、見過ごすことができない性格でした。県民の代表として行政の監視をするのが役目だから、税金の使い道をチェックすることが仕事と言って、財政のことを熱心に勉強し、追及していました」 「融通がきかないというか、中途半端なことができないというところもあったので、『煙たい存在に思われているだろう』と本人は言っていました。けれども、県民のために仕事をすることが議員の役目だから、それでこそ自分の存在意義があるから、と熱心に仕事をしていました。他に趣味らしい趣味もなかった」 「百条委の委員になった時も、県民に開かれた公開の場で問題の調査をすることが議会の役割だと言っていました。ちょうど去年の今ごろは時間を惜しんで寝る間もなく、必死に調査をやっていたことを思い出します」 -刑事告訴に踏み切った理由は。 「夫の代わりに声を上げられるのは私しかいないと思ったからです」 -告訴をするまでの気持ちの変遷は。 「(夫の死は)突然のことだったので、何がなんだか分からないという状態になりました。いろんなことが立て続けに起こって、亡くなった後は、周りのことを見る余裕もなければ、どういう心境でいたのかもあまり思い出せない」 「時間が経過するにつれて少し落ち着いて、周りで何が起きているかを見るようになって、妻として夫のことが中傷され続けているのが信じられない思いでしたし、全て夢だったんじゃないかと。夫が命を絶ったことも夢なのか、悪い夢じゃないかと思い、その都度、夫がもう帰らないことを確認しては打ちのめされてという時間がしばらく続いた」 「なんでこんな目に、死んでもなおこんな目に遭わなければならないのか。どこにもぶつける当てもなくて家のことをしていると、声をかけてくださる弁護士がいらっしゃいました」 「夫の名誉を守る。それは私が一番本当はやらなければいけないことです。一生懸命に議員の仕事をしてきたのを知っているのは私だから、私が守らなければならない」 -なぜ、この時期に。 「生前の名誉毀損について告訴をするというのは期限があるということを教えていただいて、今やらなければ、ずっと後悔するなと思った」 -立花氏の一連の発信について。 「立花氏が夫について言っている内容は、私は『全て事実ではない、間違っている』ということを知っている。夫は黒幕ではありませんし、はかりごとをしておとしめるようなことも、取り調べを受けたこともありませんし、逮捕される予定だったこともありません。夫が本当に自死だったのかどうなのか、疑わしいというようなことも繰り返し言っていますけれども、夫は自ら命を絶ったのは事実ですから、立花氏が夫について言っていることは全てが間違っています」 「そういう誹謗中傷で人が死ぬことが現実に起こっている。目に見える傷ではありませんけれども、心を傷つけられてその傷が癒えるのを待たずに、次の攻撃が襲ってくる。そうやって希望も生きる力も失って、絶望していきます。そのことは、はっきり申し上げたいと思います」 -立花氏の一部の発言は兵庫県警が否定した。対応については。 「率直にとても驚き、ありがたいと思いました。当事者がいくら説明しても、否定しても、なかなか一度かけられた嫌疑は払拭されません。やはり客観的な立場から事実が明らかにされたことで救われたように思います」 -いつごろから誹謗中傷が始まったのか。 「やはり夫が『黒幕は竹内』と名指しをされて、他にもいくつか言われて、名前を挙げられたことで誹謗中傷が始まったと思います」 「奥谷謙一県議のところに立花氏が行って街頭演説をして、『次は竹内のところだ』と予告をされた。いよいよ何が起こるかわからない。次は立花氏がうちにくるのか、そういう不安からさらに何が起こるか分からなくなっていったという状況だった」 「私がおびえる様子を見て、夫は自分自身が家族を守らなければならないという思いだった。ただその時は選挙期間中で『自分が何か発信することでどのようなこと起きるか分からない、さらにひどい攻撃が返ってくるかもしれない』という状況でした」 -ご家族の被害は。 「一番の被害というか、夫は『黒幕』というふうに名指しをされていましたから、選挙期間中、外に出ていくことで他に迷惑をかけるんじゃないかということで、一切外に出ない生活を強いられました。事務所はもう閉めざるを得なくなりました」 「夫を責めるようなものが届きましたし、中身を確かめるのも怖くてできないようなもので、直視できないような、そうした状況でした。それが突如として始まるという恐怖と、声を上げようにも上げられないという状況でした」 「夫はそれまで何でも『間違ったことは間違っている』と臆せず追及してやってきましたけれども、そういうことも発信することもできない、誰とも話ができないことで、精神的に追い込まれていきました」 -当時、竹内氏はどのような話をしていたか。 「家族を巻き込んでしまって、自分は仕事も続けられなくなった。『黒幕』と名指しされても抵抗できる力を持っていないと、すごく自分の無力さを嘆いていました」 -ネット上ではいまだにさまざまな事実無根の発信がされている。 「突如として始まったことが、こんな結末を迎えるとは思いもしませんでした。この選挙が始まるまで、夫は自分が議員を辞めるなんてみじんも考えていませんでしたし、まさかその2カ月後に命を絶つなんて、夫も私も考えたこともなかった。でも現実に起こった。ただ、これはいつどこでまた起きてもおかしくない。だからもう、同じようなことが起きてほしくないと思います」 -警察の捜査を通じて何を明らかにしてほしいか。 「立花氏が夫について発信していることが事実ではないということが明らかになって、名誉回復されることを祈っています」 「立花氏に対しては、弱い立場にある人を攻撃する、威圧的な行動で恐怖心を抱かせて精神を追い込むような、そうしたことはきちんと責任を問われるべきだと思っています」 -匿名による誹謗中傷について。 「夫は議員でしたので、顔はさらされて当たり前ですし、否定されるのも当然だとよく分かっているが、事実に基づかないことで中傷され、攻撃される。それも議員を辞めても、公人でなくなっても、責めを受け続けました。集団で追い打ちをかけられるというのを私は大変恐れていましたし、夫が仕事を辞めても続き、夫は生きる力をなくしていきました」 -社会はどうあるべきか。 「誹謗中傷されている側が、その被害を確認し、それを否定し、反論するのは非常につらく、負担が大きい。助けを求めたかったというのは正直あります。ただ夫は、家族を守るために仕事を辞め、そのことで社会での居場所、役割も失ってしまった。人間関係などが全部無になって、孤立し、こういう結末になった」 「命が失われたのは変わらない現実。だからこそ、その死を無駄にしたくないし、それによって社会が変わってほしい」

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