裁判所が7日に尹錫悦(ユン・ソクヨル)大統領に対する拘束の取り消しを認めた中、その波紋が検察と裁判所に広がっている。要点は、拘束期間と逮捕適否審査などの期間を「日数」でなく「時間」単位で計算するべきという裁判所の判断に納得できないということだ。検察の内部では「今からでも総意をまとめて即時抗告を放棄するかどうかを議論するべき」という話があり、ある現職裁判官は「(裁判所の判断は)従来の実務を完全に覆す」と批判した。 ◆現職部長検事「即時抗告放棄、意見まとめるべき」 昌原(チャンウォン)地検重要経済犯罪調査団所属のチェ・スヤン部長検事は10日、検察内部網(イプロス)に「拘束取り消し即時抗告の必要性」と題した文を載せ「今回の即時抗告放棄決定は、憲法裁判所が拘束執行停止および保釈に対する即時抗告を違憲と決定した趣旨を考慮したという趣旨で理解する」としながらも「従来の憲法裁の決定が拘束取り消し即時抗告にもそのまま適用されるとみるかは疑問」と書いた。 またチェ部長検事は「拘束期間の解釈問題と即時抗告を放棄するかどうかは一般的な対応が必要な問題だ。今からでも意見をまとめる過程を経て、検察組織全体が拘束期間の解釈および即時抗告を放棄するかどうかを議論しなければいけない」と主張した。光州(クァンジュ)高検のパク・チョルワン検事も9日、イプロスに「最高検察庁が今回の意思決定に関連した情報を正確かつ十分に提供することを期待する」とし「そうしてこそ検察構成員だけでも最高検察庁の指揮の純粋性に疑問を抱かないだろうう」と明らかにした。 捜査実務を担当する検事らも当惑する姿だ。首都圏のある部長検事は「まだ拘束期間の算定に関する新しい指針が生じたのではない。しかし裁判所が拘束期間を時間で計算するべきととした以上、我々もそのように処理するしかない」とし「今まであまり使われなかった逮捕適否審も被疑者が積極的に悪用しそうで心配だ」と指摘した。 首都圏のある検事は「今回の裁判所の決定は従来の慣行と実務のどちらにも合わない」とし「拘束期限が夜中に終わる事件の場合、その後は取り調べができないため、それだけ調査時間と拘束期間が減る効果が発生する。検察内部は衝撃的という反応だ」と伝えた。裁判所が逮捕の正当性を判断する適否審期間などは検察が捜査できないが、これを拘束期間に含めれば被疑者を調査する時間がそれだけ短縮されるという説明だ。 ◆現職判事「拘束取り消しは遺憾…実務を完全に覆す」 裁判所からも異見が噴出した。釜山(プサン)地裁所属のキム・ドギュン部長判事はこの日午前、裁判所内部網(コートネット)に「拘束取り消しは遺憾」と題した文を載せた。キム部長判事は「裁判所と検察は捜査記録が裁判所に提出された日から返還される日までの日数を拘束期間から除外する実務を維持してきた」とし「検査の拘束期間は10日、すなわち日数で定められているだけで、240時間と規定されていない」と指摘した。そして「ソウル中央地裁の今回の決定は従来の実務を完全に覆す趣旨」と強調した。 これに先立ちソウル中央地裁刑事合意25部(部長判事チ・グィヨン)は「内乱首謀」容疑を受ける尹大統領に対する拘束取り消し請求を認め、尹大統領に対する検察の公訴提起が拘束期間が満了した後だったと判断した。逮捕適否審査と拘束適否審査、拘束前被疑者尋問の期間を「日数」でなく「時間」単位で計算するべきという尹大統領側の主張を受け入れたのだ。 ◆「刑事専門ローファーム、すでに計算機たたく」 今回の決定を受け、弁護士業界は逮捕適否審と拘束取り消し請求を積極的に活用しようとしている。ソウル瑞草洞(ソチョドン)のある弁護士は「刑事事件を専門にするローファームはすでに計算機をたたいている。今日も弁護士が集まるグループチャットに『尹大統領が拘束取り消しになった理由が依頼人と似ているので、拘束取り消し請求をしてみようと思う』というコメントがあった」と話した。 詐欺・麻薬など刑事事件が専門のある弁護士は「すでに拘束期間を時間で計算する作業に着手した」とし「尹大統領と似た方法で依頼人の拘束取り消しが実現すれば『セリングポイント』になるだろう」と強調した。別の弁護士は「逮捕適否審の場合、捜査機関に嫌われる理由がないため今まで請求してこなかったが、依頼人に利益になるということが天下に公表されたので積極的に活用する計画」と伝えた。 尹大統領に対する拘束取り消しを決定した裁判所の判断で当分は混乱は避けられない見通しだ。参与連帯出身のヤン・ホンソク弁護士は「今後、裁判所・警察・検察など被疑者の身柄を拘束するすべての機関が混乱するだろう。逮捕適否審と拘束取り消し請求ともに急増するはず」と指摘した。韓国外大ロースクールのイ・チャンヒョン教授は「今回の決定は明確に現行法に反する違法的な判断であり、拘束期間をどう問いただすかは大法院(最高裁)を通して整理されなければいけない」と主張した。 ただ、捜査の実務に大きな影響はないという意見もあった。元部長検事の弁護士は「刑事専門ローファームが計算機をたたいているが、大きな効果はないはず。検察はこれまでも拘束期間を保守的にみて時間の余裕を持って起訴してきた」と指摘した。首都圏のある次長検事も「実務ですでに時間単位で計算して起訴をしてきた」とし「時間の計算をもう少し細かくする効果をもたらすだろう」と話した。