Michael Martina Shoon Naing [ワシントン 19日 ロイター] – トランプ米政権が政府系メディア「ボイス・オブ・アメリカ(VOA)」や「ラジオ自由アジア(RFA)」などの解体を進めていることについて、国内の議員や人権活動家から、中国が勢力圏を拡大する中、これまで米国が築き上げてきたソフトパワーが大きく揺らぐことになるとの批判が出ている。 VOAはナチスドイツの宣伝工作に対抗する目的で設立。40以上の言語でオンライン、ラジオ、テレビを通じて米国のニュースを配信してきた。連邦政府予算削減の一環で今月15日に職員1300人以上が休職扱いとなった。 また、ロシアやウクライナを含め東欧向けに放送を行う「ラジオ自由欧州・ラジオ自由(RFE・RL)」や、中国や北朝鮮などアジア向けの放送を行うRFAへの資金拠出も打ち切られた。 人権活動家は、VOAやRFAの多言語を話すレポーターが何十年にもわたって、中国など権威主義国による人権侵害を明るみに出し、ウイグル族など抑圧された少数民族の窮状を伝えてきたと主張。 米下院中国特別委員会のラジャ・クリシュナムルティ民主党筆頭委員もロイターに「この件を喜んでいるのは、世界中の敵対国や権威主義国だけだ。中国や北朝鮮のような報道の自由が存在しない国々では、特にそうだ」と述べた。 米下院東アジア・太平洋特別委員会のヤング・キム委員長(共和党)も、解体に向けた動きを批判。共和党のマイケル・マコール元下院外交委員長も、RFAの透明性の高い報道と中国共産党のプロパガンダへの対抗を称賛した。 中国共産党機関紙・人民日報傘下の「環球時報」は17日の社説でVOAの閉鎖を歓迎。VOAは「うその工場」だったと批判した。 カンボジアで長年にわたり強権的な体制を維持してきたフン・セン前首相も、政府系メディアを解体するトランプ氏を称賛。「フェイクニュース、デマ、うそ、歪曲、扇動、世界中の混乱を排除する大きな貢献」と述べた。同国では2017年にRFAの記者2人が逮捕され、スパイ罪で起訴されている。 一方、クーデターや報道規制、検閲に直面し米国の報道機関に頼ってきたミャンマー、ベトナム、カンボジア、ラオスの記者や活動家からは、米政府系メディアの解体を惜しむ声が出ている。 ミャンマーのジャーナリストのモン・モン・ミャット氏は「こうしたニュース番組は独裁政権下で暮らす人々に情報を提供するためにつくられた。番組を中止すれば、独裁政権や軍事政権の拡大を助けるだけだ」と語った。