NTTドコモは、Coltテクノロジーサービス(コルト)を提訴したと発表した。通話定額を悪用し、接続料をドコモから多く得たとして、返還を求めている。 ■ これまでの流れ NTTドコモでは、2014年に「カケホーダイ」として通話定額を導入。すると、ドコモからコルトのネットワークへの通話量が大幅に増加した。 これまでドコモでは、コルトの設定した接続料が高止まりしているとして協議。その間、暫定的にドコモが接続料を支払っていた。 2021年には、通話定額を悪用したトラヒック・ポンピングの疑いが発覚。コルトに対して接続料の根拠、通信量の内訳について説明を求めた。しかし、十分な回答を得られず、2023年になって総務大臣による裁定を求めることになった。 2024年7月に出た裁定では、接続料について適正な水準が定められた。これは、ドコモが暫定的に支払ってきた接続料を大幅に下回るものだったため、約10年にわたって、ドコモは過払いしてきたことになる。 ドコモでは、「コルトは法的に、ドコモへ返還する義務があり、コルトと協議してきたが、一貫して返還に応じる意思を示さなかった」として、提訴することになった。 ■ トラヒック・ポンピングとは A社のユーザーが電話をかける際、同じA社ユーザー同士であれば、A社のネットワークしか使わない。しかしB社、C社のユーザーと通話するのであれば、A社からB社のネットワーク、C社のネットワークへとつながることになる。 日本では、A社とB社、C社のネットワークを接続する際、通話料に関する料金(接続料、アクセスチャージとも)を事業者間で精算する。A社ユーザーが電話をかけたならば、A社からB社、C社へ支払う。 この際の接続料は従量課金だ。A社ユーザーが通話定額を契約して、B社ユーザーに電話をかけると、A社ユーザーからすれば通話料は使い放題(定額)のまま。しかし、A社としてはB社に対して接続料をその分支払う。 これを悪用するのが「トラヒック・ポンピング」。A社回線を契約した上でB社回線へ電話をかけ続けると、B社はA社からの収益が増える。このときB社が発信側にインセンティブなど金銭を支払い、その分が、A社の通話定額以上の金額であれば、電話をかけたA社回線の契約者は、その分、儲けになる。 2021年には、通話定額を悪用して接続料を得たとして株式会社BISの関係者が逮捕された。ドコモでは「これにより、コルトによるトラヒック・ポンピングの疑いが判明」したと説明。 その後、コルト側がBISに対するインセンティブ契約の存在を認めたものの、守秘義務を理由に契約内容は開示されていない。ドコモに対して、2023年3月、コルトはインセンティブ契約の解除を決めたと回答し、その時期から、ドコモのネットワークからコルトのネットワークへの通信量は激減したという。