『秘密』“青木”中島裕翔の中に鈴木は生きている 苦悩を共有する薪と青木の視線

『秘密~THE TOP SECRET~』(カンテレ・フジテレビ系)第10話では、薪(板垣李光人)が警察を裏切った(※本記事はドラマ本編の内容に触れています)。 青木(中島裕翔)の姉・倉辻和歌子(佐津川愛美)と夫の政信(芹澤興人)が殺害された事件で、容疑者として逮捕された青木は、嫌疑が晴れて釈放された。第九は和歌子の脳をMRIで調べ、青木も捜査に加わらせてほしいと志願する。第九の身内に犠牲者が出た事件であり、参加させないのが通常の判断だが、薪は青木に事務方を命じた。 青木はなんとしても自分の手で犯人を捕まえたい。その思いを察して、青木の目になることで部下を守ろうとする薪。それは薪自身を追い詰めることであり、そんな薪を岡部(高橋努)は「青木の盲信を支えられますか?」と心配する。 薪と青木、岡部、そして瀧本(眞島秀和)。視線の交錯は何を意味しているのだろう。登場人物が互いに対して特別な感情を抱いているが、それらは一方通行で、思いを遂げられないジレンマが常につきまとっている。第1話から一貫してある今作特有の感覚で、思いの届かないもどかしさから逃れられない。 それが何に起因しているかというと“秘密”だと思う。その人だけが知っていることを他の人は知ることができないという事実は、MRI捜査によって死者の記憶を映像化する本作の設定にとって決定的に重要である。どんなに親しい人でも、その人の本心は謎として残る。本当にあなたはその人のことを知っているのかと問うように。 薪が失踪したとき、第九のメンバーに行き先を告げなかった。それは、第九で薪だけが事件の真相を知っていることを意味する。真相とは青木の姉夫妻が殺され、薪の車が爆破された事件だ。その鍵を握っているのは瀧本で、犯人からのメッセージ「秘密を渡さぬ代償」と合わせて、薪だけが知っている秘密を入手しようとしていた。

シェアする

  • このエントリーをはてなブックマークに追加