“無期刑受刑者”遠ざかる社会復帰の可能性 「仮釈放」が年々認められにくくなっている背景とは

3月25日、東京地裁は国に対し、刑務所における医療ミスで死亡した無期懲役囚の男性の遺族へ計約2200万円の賠償金を支払うよう命じる判決を言い渡した。この男性は、1971年に発生した「渋谷暴動事件」で警察官を殺害したとして殺人罪に問われ、87年に無期懲役刑が確定し服役していた星野文昭元受刑者。 持病を抱えながら服役していた星野元受刑者は、体調が悪化した後も適切な医療措置を受けられず、外部の医療機関への搬送も遅れた結果、死亡に至った。判決では、刑務所の医療体制に過失があったと認定された。 さらに裁判所は、仮釈放の判断についても言及している。星野元受刑者の病状が悪化していたにもかかわらず、適切な時期に仮釈放の審理が行われなかったことは、医療体制の不備と並んで問題視された。 刑法28条は「懲役または禁錮に処せられた者に改悛(かいしゅん)の状があるときは(中略)無期刑については10年を経過した後、行政官庁の処分によって仮に釈放することができる」と定めており、改悛の状のある無期刑受刑者の終身拘禁を想定していない。判決は、無期懲役囚の社会復帰の可能性を考慮せず、適切な医療措置も行わなかった国の対応を厳しく批判している。 賠償金は、国民の税金によって支払われる。「無期刑受刑者の社会復帰」と「国民の負担」は、無関係ではない。(社会学者・廣末登)

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