厳罰だけでは解決しない…「ラクにお金を稼ぎたい」闇バイトに加担した少年に向き合う"家裁調査官"の本音

闇バイトに加担して逮捕される少年たちが後を絶たない。罪を犯した少年たちはその後、どうなるのか。『家裁調査官、こころの森を歩く』(日本評論社)の著者で、家裁調査官として少年たちに向き合う高島聡子さんに、ライターの佐藤隼秀さんが聞いた――。(後編/全2回) ■少年たちの罪悪感が“うまく”消されている ――昨今、報道が加熱している闇バイトですが、なぜここまで蔓延しているのでしょうか。 誘い文句自体に「闇バイト」ではなく、「ホワイト案件」などという言葉が入ってきたように、誘い文句がどんどん巧妙になっているのもさることながら、厄介なのは犯罪組織が少年たちの罪悪感や警戒心をうまく消しているところです。 闇バイトに加担した少年が、指示役に丸め込まれた一例に、こんなやりとりがありました。 「年寄りはズルして貯め込んだお金の使い道に困っている。死んだら国に取られる金を回してもらうだけ」 「捕まっているのは素人だけ。うちはプロ集団ですから絶対安全、捕まることは100%ありません」 上記のように一度、犯行を躊躇した少年に対して、いかにも真っ当に見える理屈や「安心、安全」を説くケースが報告されています。 もちろん、実際に逮捕された少年の弁解は言い訳がましく、警戒心のなさや見通しの甘さを露呈させますが、犯罪組織が罪の意識を拭っていることも事実です。少年の立場からしても、ほんの少し怪しさや警戒心を感じたとしても、指示役の言い分に納得してしまうのです。 ■「安全性バイアス」が働いてしまう また「受け子」「出し子」といった分業化を進めることで、被害者とも接触せず、罪悪感なく犯罪の一端を担ってしまう。あるいは、「闇バイト」の危険性についての報道を見ていても、「自分たちはそんなヘマはしない」と思っていたと話す少年もいます。 これは心理学でいうところの「安全性バイアス」と言われる心理(自分にとって都合の悪い情報には目をつぶり、都合の良い情報だけを取り入れようとする認知の特性)です。 そして気づいた時には、住所などの個人情報を握られ、警察に逮捕されるまで抜け出せなくなったり、指示されるがままに詐欺どころか侵入盗、強盗致傷といった凶悪犯罪に至るといった事例が増加していると感じます。 ――そもそも最初から、危険な匂いのする案件に応募しなければ問題ないのでは。 そう判断できるに越したことはないですが、昨今は以前に比べて犯罪の垣根が低くなっていると感じます。例えば、SNSやビジネス向けのサイトを見ると、「稼げる副業」「コスパの良い投資」のような謳い文句を掲げた情報を多々目にしますよね。

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