故・ジャニー喜多川氏による性加害問題を受け、ジャニーズ事務所が被害者への補償終了後に廃業する方針を示してから1年が経過。新社長となった東山紀之は「人類史上、最も愚かな事件」と述べ、補償に専念するとしてタレント業を引退した。 日本最大の“アイドル帝国”崩壊のきっかけとなった昨年の英BBCによるドキュメンタリー番組、あらゆる日本メディアが“黙殺”した25年前の「週刊文春」によるスクープ記事とはどのようなものだったのか。経緯を追った当時の記事を全文公開する。 (初出:「週刊文春」2023年3月16日号。年齢、肩書は当時のまま。) ◆◆◆ 「口でされたり…」元ジャニーズジュニア3人による顔出しの告白。2023年3月7日放送のBBCは、日本で封印されてきた闇を明るみに出した。小誌が暴いたジャニー喜多川の性加害を黙殺してきた芸能界、メディア、広告……。実は、小誌報道後も性加害は続いていた――。 画面いっぱいに映る、黒縁メガネとマスク姿の男性。一瞬せき込むと、俯きながらこう声を絞り出した。 「戻ってきた時には多分、顔は……。(声を詰まらせて)ちょっとごめんなさい。(顔は)おかしかったと思うので。皆には夢が壊れたとか、そんな感じで言って、その後に何人かが、『これを我慢しないと売れないから』と」 性的虐待の被害者が、テレビカメラの前で衝撃の告白をした瞬間だった。 ◇ イギリス時間の3月7日午後9時、公共放送「BBC Two」のゴールデンタイムで、1時間の番組が放送された。タイトルは、『Predator:The Secret Scandal of J-Pop(プレデター~Jポップの秘密のスキャンダル)』。 ここで“プレデター(捕食者)”と名指しされている人物。それは2019年に死去したジャニーズ事務所創業者、ジャニー喜多川氏(享年87)である。番組はジャニー氏を「Jポップ界のゴッドファーザー」と表現。ジャニーズのアイドルがメディアを席巻し、街を歩けば、至るところに、グッズ、広告などあらゆる姿で存在している様子を映し出す。そして、レポーターはこう切り出した。 〈しかし、何十年もの間、ジャニー喜多川にはある疑惑がつきまとっていました。事務所に所属する少年たちに、性的虐待を加えていたという疑惑です〉