なぜ人は違法薬物に手を出してしまうのか。俳優の橋爪功を父に持つ橋爪遼さんは、2017年6月2日、覚醒剤取締法違反の現行犯で逮捕された。現在はフリーランス俳優として活動する橋爪遼さんに、薬物の使用から復帰に至るまでの道のりを聞いた――。(インタビュー・構成、ライター黒島暁生) ■実の父親のことを「橋爪さん」と呼ぶワケ 橋爪遼さんの父親は誰もが知る名優・橋爪功さん。取材中、父親について言及するときは、一貫して「橋爪さん」と呼ぶ。 「父を『橋爪さん』と呼ぶのは、俳優という仕事の世界では大先輩だからですね。たとえば同じ会社に勤める親子がいたとして、子どもが親を『お父さん』『お母さん』と会社で呼ぶことはないと思うんですよ。私にとっては、そういう感覚で『橋爪さん』と呼んでいます」 ややもすれば他人行儀にも聞こえる呼び方をする理由には、一定の説得力がある。とはいえ、話を聞いていると、心理的な距離感がまったくないわけでもないようだ。 「父は仕事で家にいないことも多く、学生時代も気軽に『パパこれやってよ』などと話しかけられる存在ではありませんでした。妹はわりと橋爪さんにも遠慮せず言っているなと思うんですが、私にとっては威厳のある父親でしたね。特に自分が中高生のときにすでに橋爪さんは50代でしたから、遠い存在に思えたのかもしれません。 学校でも、橋爪功についてはもちろんみんな知っているものの、別にアイドルではないので日頃から話題になるわけではないんですよ。ただ、小学校のときなどの参観日で訪れると、先生たちが丁寧な対応をするというか。そういう光景を見ていて、手の届かない存在だというのを勝手に内面化していったのかもしれません」 勝手に内面化――その言葉が示す通り、橋爪功さんは自らの威光をいたずらにかざすことはなかった。