監督: 樋口真嗣 主演: 草彅剛で贈るノンストップサスペンス、Netflix映画『新幹線大爆破』が4月23日に配信開始された。本作は、高倉健主演で1975年に公開された映画『新幹線大爆破』のリブート作品。過去のヒット作をIPとして拡張させる成功例が日本映画ではなかなか出てきていない中、今回はその資金石となりえるであろう本作をご紹介。 ・・・ 映像コンテンツにおいてIP (知的財産) ビジネスの重要性がますます増してきた昨今。マーベルやDC作品はもとより、任天堂が自ら制作に携わって『ザ・スーパーマリオブラザーズ・ムービー』や「ゼルダの伝説」の映画化を進めており、エミー賞で作品賞に輝いたドラマ「THE LAST OF US」やコジマプロダクションとA24が組んだ「DEATH STRANDING」ほか、ゲームのドラマ・映画化企画が相次いでいるが、これらもその一例だ。国内作品だと漫画を中心としたメディアミックスや「踊る大捜査線」のようなテレビ局映画にその特徴がみられる。直近でいえば人気ドラマ「アンナチュラル」「MIU404」と世界観がつながるシェアード・ユニバース・ムービー『ラストマイル』のヒットが記憶に新しい。 ただ、日本映画の文脈ではなかなか過去のヒット作をIPとして拡張させる成功例が出てきていないのも現状だ(『座頭市』等の時代劇であれば幾つかあれど、近作はなかなか見当たらない) 。そんななかで、興味深い動きを見せているのがNetflix。これまでも円谷プロと組んで『Ultraman: Rising』を制作し、カプコンの人気ゲーム「鬼武者」「デビルメイクライ」等をアニメ化してきた(ちなみに「鬼武者」では『七人の侍』などの三船敏郎を主人公・宮本武蔵のモデルにしている。2026年発売予定の新作ゲーム「鬼武者 Way of the Sword」も同様)。さらに、満を持して日本の実写IPにも新たな一手を打ち出した。1975年公開のパニック映画『新幹線大爆破』や1960年公開の特撮映画『ガス人間第一号』といった作品群に目を付け、舞台を現代に移してリブート (再起動) すると発表したのだ (なおリブート版「ガス人間」はNetflixと東宝の初タッグ作品となる) 。日本映画の歴史を遡り、強力なコンテンツを掘り起こして再利用する――日本の総人口における高齢者 (65歳以上) の割合は29.3% (2024年現在) と過去最高になっており、シニア世代に刺さる“リアタイ”だった題材を現役世代も入りこめる味付けで再提示するアプローチは、実に理にかなっている (コアな映画ファンとライト層を繋ぐ役目も果たすだろう) 。 その“始発”として、IP展開の面から見ても試金石になりそうな『新幹線大爆破』(4月23日より世界独占配信中) 。オリジナル版との比較は見てのお楽しみということで――本稿では本作のIPとしての強度と可能性を象徴する“現代化”の部分を中心に紹介したい。