13歳の少年が特殊部隊に突然連行されて…「現代のSNS社会を示唆している」全話ワンカット撮影の『アドレセンス』がこれほど注目を集める理由

観れば必ず誰かに薦めたくなる。ネットフリックス制作のドラマ『アドレセンス』の衝撃が今、世界を駆け巡っている。配信開始から2週間の視聴数は同配信サービスのリミテッドシリーズとして過去最多を記録。80ヵ国以上でランキング1位を獲得するなど今春、最も話題を呼んでいる配信作だ。なぜ、これほど注目を集めているのか? それは見る者を圧倒する迫真性と徹底したリアリズムの追求にある。 物語は英国の静かな住宅街のある一軒家に突如、警察の特殊部隊が突入する場面から始まる。どんな凶悪犯を捕らえるのかと思いきや、彼らのターゲットはあどけなさが残る13歳の少年ジェイミー。同級生の少女を殺害した容疑で署まで連行され、そのまま身体検査や取り調べを受ける一部始終が全てワンカット、つまり編集を一切加えない一発撮りのワンシーンで撮影されているのだ。ワンカット撮影はともすれば手法が目的化し、カメラの前で次々と物事が展開する現実離れした“ワンカットショー”と化す場合もある。だが、本作はむしろこの手法を“現実”を描くための手段として用いている。容疑者や家族への説明、未成年者の逮捕時に付き添う立会人の選任など、通常のドラマなら省略されがちな手続きの過程も忠実に再現される。これらが切れ目なく続くことで観客はある日突然、殺人容疑をかけられた少年や彼の家族と同じ時間や体験を共有しているような錯覚をおぼえる。また、視点がカメラ一台に限定される様は“視野狭窄”に陥る現代のSNS社会を暗に示唆しているようにも思える。 全4話、全てワンカット撮影で貫かれた本作。第2話の驚愕のカメラワーク。第3話の臨床心理士と容疑者ジェイミーの戦慄の対話。そして、最終話の父親の慟哭。役者の渾身の演技を引き立てる緻密に設計された撮影プランに一時も目が離せない。稀に見る、紛れもない傑作である。 INFORMATIONアイコン『アドレセンス』 https://www.netflix.com/jp/title/81756069

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