日本人の朝のはじまりに寄り添ってきた朝ドラこと連続テレビ小説。その歴史は1961年から64年間にも及びます。毎日、15分、泣いたり笑ったり憤ったり、ドラマの登場人物のエネルギーが朝ご飯のようになる。そんな朝ドラを毎週月から金曜までチェックし、当日の感想や情報をお届けします。朝ドラに関する著書を2冊上梓し、レビューを10年続けてきた著者による「見なくてもわかる、読んだらもっとドラマが見たくなる」そんな連載です。本日は、第21回(2025年4月28日放送)の「あんぱん」レビューです。(ライター 木俣 冬) ● のぶが女子師範学校に入学 新しい展開が始まる第5週 「花に嵐のたとえもあるぞ さよならだけが人生だ」 寛(竹野内豊)と並ぶ名言メーカー・ヤムおんちゃん(阿部サダヲ)。でもこれは彼の名言ではない。井伏鱒二が漢詩「歓酒」を訳した名訳である。「さよならだけが人生だ」はいまも使われ続けている。 『あんぱん』の脚本家・中園ミホも彼女の代表作『ドクターX〜外科医・大門未知子〜』で「私失敗しないので」という名言を生み出している。今回はやなせたかしをはじめ、先人の名言をちりばめている印象だが、中園オリジナルの名言誕生のときがくるだろうか。 高知の独特の言葉「たまるかー」をのぶ(今田美桜)の口癖としてチョイスしたセンスに、言葉に対する感の良さが発揮されている。 第5週のサブタイトル「人生は喜ばせごっこ」もやなせの言葉から取られたものである。 この第5週(演出:柳川強)のはじまりでは、のぶが女子師範学校に入学する。 寮生活に向けて御免与町を颯爽と旅立っていくのぶ。洋服(制服)を着て帽子をかぶり、2本のおさげ髪を後ろで太い1本にして。 それをそっと見送る嵩(北村匠海)にはこれから1年の浪人生活が待っている。