初の女性警察署長、子育て経験は仕事の「引き出しに」 同期は男性ばかり、どうキャリアを築いたのか

入澤今日子さん(59)は、京都府警本部地域部次長から3月21日付で向日町署長に就任した同署初の女性署長。自身の子育て経験などが、ドメスティックバイオレンス(DV)や児童虐待の被害者と向き合う際に「引き出しになる」と語り、女性署員には「結婚や子育てで仕事から一時的に離れても、長い目ではキャリアにプラスになる」とエールを送る。 奈良県田原本町出身。看護師をしていた母の影響で、昔から「誰かのためになる仕事をしたかったが、警察なんて考えたこともなかった」。だが、大阪府内の大学で社会福祉を学ぶうち、京都府警の募集ポスターを見つけたことが転機に。「一生の仕事に打ち込みたい」と飛び込んだ。 1988年に府警に入り、振り出しは四条交番だった。観光客でにぎわう地域でスリや万引などの軽犯罪が多かった。特に手を焼いたのが修学旅行生を狙った恐喝だ。寺町通を私服で一人パトロールしていると「修学旅行」「制服」と言葉が耳に飛び込んできた。近くには10代の少年4〜5人の集団。何食わぬ顔で通り過ぎ、署に戻って先輩に報告すると「すぐ行くぞ」。近隣の交番の署員とも協力して現場に急ぐと、まさに少年らが恐喝をしている場面に出くわし、現行犯逮捕した。 府警に入った80年代、女性警察官は非常に少なかった。同期の男性は何百人もいたのに女性は6人だけ。当時は泊まり勤務もなく、男性同様に働けないことに「悔しさを感じていた」。そのため、自分が恐喝犯の逮捕に貢献できたことが「とにかくうれしかった」と笑みを見せる。 府警本部生活安全企画課ではストーカーやDV、盗撮などの取り締まりに長く関わった。管内で急増する特殊詐欺については「特効薬はない。普段から気になることは署員同士で必ず口に出して確認し、防ぎたい」と強調する。対策のため、ポスター掲示やビラ配りなどにも地道に取り組んでいく方針だ。 息抜きは、動画配信サービス「ネットフリックス」で海外ドラマを見ること。裁判・刑事ものなどのリーガルドラマが特に好き。

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