【浜松・児童死傷事故】死亡女児の父「まだ気持ちの整理ついていない」 忌明けを前に涙こらえ

3月に浜松市中央区舘山寺町で軽トラックが女児の自転車の列に突っ込み、4人が死傷した事故で、死亡した小学2年の女児(8)の父親(37)が静岡新聞社の取材に応じた。10日は神道で忌明けとなる五十日祭。「まだ気持ちの整理はついていない。『また会おうね』と伝えたい」と、涙をこらえた。 「事故で妹(女児)が心肺停止、姉も危険な状態」。事故が起きた3月24日夕、仕事場で妻から電話を受けた。搬送先の病院は別々。姉の病院に向かう途中で、妹が亡くなったと連絡を受けた。 遺体と対面したのは集中治療室(ICU)で手術を受けた姉が小康状態となった深夜。「妹と会ったはずなのに、記憶がないんです」と語る。 1週間以上眠れず、食欲もない状態が続いた。慌ただしい日々の中で感情の起伏も大きく、「極限状態だった。自分の容量を超えてしまって、情報の処理が追いつかなかった」と振り返る。 仕事から帰宅すると玄関に来て、抱っこをせがむ姿が今も頭から離れない。妹は明るく活発で、人なつっこい性格だった。甘い物が大好きで、スマートフォンに残る写真の多くは、菓子を手にした姿。自宅の祭壇には、笑顔の妹の遺影を囲むように、たくさんの菓子や花が供えられている。 姉は事故から5日目、妹の通夜の日に意識を取り戻した。呼吸器や首のコルセットなどを着用していたが、かすれた声ながら会話ができた。「良かった。本当に良かった」。絶望の中に安堵(あんど)を感じた。 2週間ほどで退院し、目立った異常はみられないが、注意散漫な時があるのを不安に思う。さらに気がかりなのは、妹が亡くなったことを知ってから涙を見せていないことだ。 祭壇にもあまり近づこうとせず、「まだ受け入れられていないのかもしれない」。ずっと一緒にいた妹の分まで、「ただただ生きていてほしい」と今はただ願う。 ■処分保留で釈放の運転男性 在宅で捜査続く 軽トラックを運転し、女児の自転車の列に突っ込んだ浜松市中央区の農業男性(78)は、自動車運転処罰法違反(過失傷害)で逮捕され、同法違反(過失致死傷)に切り替えて静岡地検浜松支部に送致された。同支部は4月14日に処分保留で釈放し、在宅に切り替えて捜査を進めている。 男性は静岡新聞社の取材に、当時の状況について「子どもたちを見た記憶はない。手前のカーブあたりまでは覚えているが、気付いたら事故を起こしていた」と語っている。事故の半年ほど前から、胸が痛くなる発作によりめまいがする症状が出ていたという。狭心症などに関する複数の薬も服用していたとした。 捜査機関は男性の事故当時の体調などを含め、慎重に調べを進めている。

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