「何をしてもダメな親もいます」 小学校乱入事件が波紋、厳しさ増す“保護者対応” 現役教員が苦悩を吐露

東京・立川市の小学校で8日、男2人が敷地内に侵入し教員ら5人に暴行を加える事件が発生、波紋が広がっている。逮捕された男2人はこの学校に通う児童の母親の知人で、一連の報道では、児童を巡る学校と保護者間のトラブルが背景にあったとみられている。事件はなぜ起こってしまったのか。保護者とトラブルになった際の適切な対応について、現役の教員に話を聞いた。 8日午前10時55分ごろ、立川市立第三小学校の敷地内に同校に通う児童の母親とその知人男性2人が侵入。男らは当時授業をしていた2年生の教室に押し入り、手に持っていた酒瓶を床にたたきつけたり、教員を殴るなどしてけがを負わせた。男らはその後職員室に移動、窓ガラスを割るなどした後、教員らに取り押さえられ、駆けつけた警察官に現行犯逮捕された。児童は全員無事だったものの、30代~70代の教職員5人が軽傷を負った。 男らを呼んだ児童の母親はこの日の朝、児童間のトラブルについて担任と面談。話し合いがまとまらずに知人男性2人を呼び、再び学校を訪れたという。調べに対し、逮捕された2人のうち40代の男は「制止されたので振り払っただけ」と容疑を否認、20代の男は容疑を認めている。 児童間のトラブルに保護者が介入し、暴力事件となってしまった今回の一件。現役教員からは保護者対応の難しさを口にする声が上がる。 東北地方の公立中学校に勤める60代の女性教諭は「モンスターペアレンツと呼ばれる保護者は毎年います。今回の事件の背景は分かりませんが、うちの県では何よりも保護者を刺激しないよう、トラブルがあった際には全力で寄り添う対応がマニュアル化されています」と実情を語る。 「こんな時代ですから、保護者の神経を逆なですれば、すぐにSNSでバッシングされたり、録音された音声を拡散されたりします。保護者が乗り込んできた際には『メモや録音をしていただいて構いません』と伝え、場合によってはこちらも録音して、言った言わないの証拠を残すようにする。また、1対1ではどうしても話がこじれるので、間に管理職やスクールカウンセラーが入ったり、教育委員会への相談を勧めることもある。教育委員会から指導が入れば、現場はあらためざるを得ないので、保護者にとってもその方が効率的。そういう解決手段があることを、保護者にも周知していくことが必要だと感じます」 ネット上では、いじめなどのトラブル対応について、学校側の事なかれ主義や隠ぺい体質をあげつらう声も根強い。地域や学校によっても事情はさまざまだが、実際のところ、大事になることを忌避するような雰囲気はないのだろうか。 「なるべく穏便な解決をという意味であれば、もちろんそう。だからこそ、少しでもいじめの相談や兆候があれば授業をつぶしてでも最優先で解決にあたります。今の時代、本人がいじめられていると感じれば、その時点で100%いじめ事案になる。中学生なんて、本当にちょっとしたことで命を絶ってしまうこともありますから。保護者対応としては、どんな理不尽なことを言われてもグッとこらえ、なだめ、解決手段をいろいろと提示していく。相手の話を尊重しているという態度を取り続けることに尽きます。中には何をしてもダメな親もいて、耐えられずノイローゼになって辞めていく教員もいますが……」 もちろん、どんな事情があったにせよ、暴力という手段に出ることは許されない。さまざまな児童や保護者がいるなか、どのように問題と向き合っていくのか。教員の抱える苦悩は計り知れない。

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