元埼玉県警捜査1課の佐々木成三氏が、8日配信のAbema報道番組「Abema Prime(アベプラ)」に出演。川崎市で起きた死体遺棄事件をめぐり、ストーカー被害に対する警察の対応の難しさを解説した。 番組では、川崎市の住宅で岡崎彩咲陽(あさひ)さん(20)の遺体が見つかった事件で、元交際相手の白井秀征容疑者(27)が死体遺棄容疑で逮捕された事件を特集。白井容疑者が行ったストーカー行為に対し、被害者が昨年12月に9度通報した際に、警察が警告などを発しなかったことなどの対応に対し、遺族や世間から批判が出ていることを伝えた。 佐々木氏はフリップで、24年の全国のストーカー相談件数が1万9567件にのぼることを紹介し「警告と禁止命令で2000件出している」と説明。またストーカー規制法違反による検挙が1338件、刑法犯などでの検挙が1742件とした。まず「ストーカーの相談を受けました、その前段階で住居侵入がある。その場合、ストーカー規制法違反ではなくて刑法犯で検挙する。そっちの方がスピーディーなんですね。警告して、禁止命令出して、それに違反して逮捕ではなくて。なので刑法犯として逮捕する件数も上がっている」と説明した。 ここで、川崎の事件に対する対応についても言及。「今回殺人に発展したということで、多くの方が、警察にストーカーを相談すると、容疑者が逆上してしまって、大きな事案になってるのではないか、と思われるんですけども、毎年殺人に発展するのは1件あるかないかなんです。そのうち、この相談件数1万9567件を受けて、口頭注意で約1万2000件をやっているんですね。その中でストーカーが止まっているというのは、正直あるんですよ。だから僕は、ストーカー規制法違反は、一定の抑止効果はあると思うんです」と私見を述べた。 その上で「じゃあ、その1件を、今回の事案も含めて(対応するには)、ストーカー規制法違反というのは、まず被害者の申し出が明確にないとダメなんですね。(相手を)拒否している、という申し出がしっかりないと、ストーカー規制法違反で警告、禁止命令ができないんです」と解説。進行の平石直之アナウンサーが「署名が必要になるんですよね」と補足した。佐々木氏は「被害者が9回、電話した、という中で、『警察署に来てくれ』と言ったんですが、被害者は来られなかった。これはもしかしすると怖くて来られなかったのかもしれない、という中においては、その申し出を明確に取れなかった」と語った。 さらに昨年10月などに復縁があったことも前提に「その中で復縁を繰り返している。復縁をしてしまうとストーカーではなくなってしまうんですね」と説明。「その中で、禁止命令と警告を、警察の主観で『何回も相談を受けているから、これは被害者の申し出なしに、警告なり禁止命令をやればいい』となってくると、警察の主観で約2万件、全部やってしまった方がいいとなると、例えば復縁をしているカップルに対して、男性に禁止命令を出しました、会ったら逮捕なんですよ。これを警察の主観でやっていいかというところは判断が難しくて、被害者の申し出というのは、僕は絶対条件だと思うんですよね」と持論を展開した。 ここで平石アナが「警察権力が強くなりすぎるという一方で、被害届を出したけど取り下げました、復縁した、というけど、相手の男が場合によって『復縁したから取り下げって言え。取り下げてこい』と言っていた可能性もなくもない」との状況を推察。すると佐々木氏は「例えばそれを警察が認知していたら、強要(罪)で逮捕します。被害届取り下げも無効にするはずなんですよ。報道の中で、これは警察として把握してなかった、と。遺族が言っていることをすべて警察が把握できていなかったことも事実あるというと、僕はやっぱり警察と被害者、被害者のご遺族とのコミュニケーションが足りなかった、というのは否めないとは思うんですよ」と指摘。「今回、被害届を取り下げた、複数回呼んでも来なかった、結果論として、警察が行けば良かったんじゃないか、それは思うんですね。何回も相談受けているから、警察が説得しても良かったです。『取り下げないください。警告させてください』と。ただ、これをすべての相談件数を警察がやるということは、マンパワーとしてはかなり厳しい」と、対応の難しさを語った。