青森県内で特殊詐欺の被害が深刻さを増す中、県警は14日、実際に被害者に送られた偽の「逮捕状」や存在しない「凍結捜査差押許可状」などを公開した。県警が14日までに認知した67件(前年同期比51件増)のうち、警察官をかたった詐欺は4割の27件だった。東奥日報の取材によると、特殊詐欺とSNS(交流サイト)型投資・ロマンス詐欺の合計被害金額は同日時点で5億円を超え、県警は警戒を強めている。 「警察官は、SNSで連絡したり、警察手帳や逮捕状などの画像を送ることは絶対にありません」。同日公開された県警公式ユーチューブ動画で、小野寺健一本部長は強調した。県警トップによる異例の呼びかけだ。 県警はインスタグラムやX(旧ツイッター)などで注意喚起を続けているが、毎日のように被害が明るみに出ている。 12日に三沢署が発表した事案では「逮捕した犯人があなた名義の口座を使用していた。LINE(ライン)で取り調べをする」と、30代女性に警視庁の警察官をかたる男から着信があった。ビデオ通話で偽の「警察手帳」を提示され、「逮捕状」などの画像を見せられた女性は、相手を本物の警察官だと信用し、暗号資産時価合計140万円相当を送金した。 警察庁によると、特殊詐欺は、2000年代初頭に登場した「おれおれ詐欺」が発端とされる。「息子や孫になりすました犯人から電話があり、仕事に関するトラブルなどを口実に、お金を要求する詐欺」と定義している。 しかし、近年は形を変えている。警察官を名乗り「あなたの口座が犯罪に使われている」「2時間後にあなたの電話は凍結される」などとさまざまな理由をつけ、「口座を調査する」と告げ現金をだましとる。警察官役の犯人は「逮捕する」と不安をあおったり、偽の警察手帳や逮捕状を見せて信用させる。 このような手口は県内では24年から確認され、今年認知した警察官をかたる詐欺27件のうち、15件で偽の逮捕状や警察手帳を提示していた。 急増する理由として、ある捜査関係者は「逮捕状や警察手帳は一般市民にとってなじみが薄く、見せられると本物だと信じてしまいやすい。詐欺グループにとっては、成功率が高いのではないか」と推察する。 県警生活安全企画課の大野吉康次長は、5億円を超える被害について「厳しい状況」とした上で、「手口の周知を関係機関と連携して強化していく。市民の方々にも、家族や親戚に声かけをしてもらい『注意力の輪』を広げていきたい」と話した。