全国の労働局が4月30日までに公表した「雇用調整助成金」(以下、雇調金)等の不正受給件数は、2020年4月からの累計が1,699件に達した。不正受給総額は551億6,918万円にのぼる。 2025年1-4月の公表件数は累計154件で、月平均は38.5件となり前年の52.0件を13.5件下回る。 4月の公表は14件で、2022年6月以来、34カ月ぶりに20件を下回った。新型コロナウイルスの5類指定から2年が経過し、不正受給の公表は落ち着きつつある。 2025年の公表件数は小康状態にあるが、3月は65件と高水準だった。また、2月25日公表の結婚式場運営のアルカディア(株)(TSRコード:930096622、福岡県)は、不正受給金額が歴代3位の10億1,896万円にのぼった。同社は元社長らが詐欺容疑で逮捕され、3月21日に破産開始決定を受けた。突然の事態に、予定していた挙式が取りやめになりマスコミでも大きく報じられた。 不正受給が公表された1,699件のうち、倒産したのは100件に達した。これは全体の5.88%で、東京商工リサーチが今年2月に発表した「倒産発生率0.19%(2024年)」の31倍にあたる。 不正受給の発覚に伴い助成金の返還だけでなく、取引先や金融機関の信用を喪失したことで、事業継続の断念に追い込まれる企業が今後も現れる可能性は高い。 コロナ禍の雇用維持のため、迅速な雇調金支給のために手続きを簡素化した特例措置が講じられた。この特例措置を狙った不正受給は明白なコンプライアンス(法令順守)違反だ。社会保障制度の公平性を保つためにも、支援を逆手に取った不正受給の摘発は今後も徹底すべきだろう。 ※ 本調査は、雇用調整助成金、または緊急雇用安定助成金を不正に受給したとして、各都道府県の労働局が2025年4月30日までに公表した企業を集計、分析した。前回調査は3月21日発表。