ドイツ1部マインツに所属する日本代表MF佐野海舟が5月28日、千葉県内で行った自主トレ後に謝罪会見を開いた。昨年7月に不同意性交の容疑で逮捕され、不起訴となったあと、初めて国内で取材に応じた。騒動から約10か月。代表復帰を果たしたこのタイミングで、謝罪会見の実施に至った理由の1つには本人の強い希望があった。 硬い表情を崩さず約30人の記者の前に現れた佐野は黒髪、黒のスーツ、紺のネクタイを着用し、会見の冒頭で約3秒間、深々と頭を下げた。「本当に昨年の自分の行動によってたくさんの方々にご迷惑をおかけしてしまい、本当に申し訳ございませんでした。自分にできることを日々考えながら、サッカー面、プレー、行動、言動というもので自分が出せるものを出し続けていきたいと思いますし、プレー以外でも自分にできることを考えて社会に貢献し続けたいと思っています」と、騒動について陳謝した。 昨年7月中旬に不同意性交の容疑で逮捕されて勾留され、同7月下旬に釈放された。釈放後、移籍が決まっていたマインツに合流するために渡独。8月上旬には不起訴処分が決まった。マインツでは今季全34試合で先発出場。結果としてシーズンを全うしたものの、「サッカーを辞める考えはありました」と、拘留期間中に現役引退も頭の中にあったと心中を明かした。 1年4か月ぶりに復帰した日本代表。森保一監督は「私自身もコンタクトを取りましたし、深く反省していることを感じました。その上で彼がドイツでプレーさせていただいている中で、真摯に競技に向き合って、社会に貢献するという強い意志を持ってプレーしていることもあり、我々としてもまたチームに帰って社会に貢献する、日本代表の一員として戦ってもいいのではないかと判断をさせてもらいました」と招集の理由を明かしていた。 オーストラリア、インドネシアと戦うW杯最終予選の直前のタイミングで行われた会見の場。「自分の口から伝えないといけないなというふうに思って、この会見をしようと思いました」。佐野が自ら希望して、実施された場だった。 本来であれば、渡独の前が適切だったかもしれないが、所属事務所の「UDN SPORTS」の担当者は「釈放後に皆様の前に立たず、ドイツへ移籍させてしまったこと、本当に申し訳ございませんでした。当時、相手側とのプライバシーの方も考えまして、弊社、私の判断にてドイツに移籍するという形を取らさせていただきました」と説明。マネジメントサイドの判断もあった、として謝罪した。 日本代表としての活動がスタートする前に開いた会見。代表活動が始まれば、佐野も取材エリアを通らなければならなくなる。その場合、試合に向けての質問だけではなく、今回の会見で飛んだような質問もされたことだろう。自らの希望で代表合流前に自らの口で事件について語り、謝罪したことに、国を背負って戦う試合に向かう強い覚悟と意志が滲んだ。 「自分に対する賛否はもちろんあるというのは思っています。でも、自分にできることを考えて、僕は日本のサッカーのために戦うしかないと思っているので、それをやり続けて、プレーで行動で示していきたいなと思ってます」 もちろん世間の厳しい目はある。釈放後、全ての対応が正しかったとは言えないかもしれない。ここからのプレーと姿勢で示していくしかない。「自分を見つめ直した」と話す佐野が、ピッチ内外でどのようなプレーや振る舞いを見せるのかに注目していきたい。