大阪・ミナミのグリコ看板下の遊歩道、通称「グリ下」。居場所がないとして、この一角に集まる少女らが性的搾取の対象となる事件が相次いだ。大阪市はグリ下に巨大な塀を設置。長時間の滞在をできなくし、若者が集まらないような対策を取った。ただ、これまでグリ下を訪れていた若者にとって、居場所がないということに変わりはない。関係者の間には「第2のグリ下」が生まれ、「イタチごっこになるだけかもしれない」との懸念も広がる。 「100(万円)なんか余裕で稼げる」。大阪府警が2月以降、売春防止法違反容疑などで逮捕した男3人のグループは、少女2人に甘言を弄して東北や北陸で複数の男性相手に連日売春をさせていたとされる。 少女らはホテルや車内で何人もの男性を相手にしながら、石川県や福井県内を車で転々と移動。「やめたい」「しんどい」と訴えても聞き入れてもらえなかった。 ほかにも数人の少女が売春をさせられた可能性がある。府警は一連の行為に組織的な関与がなかったか、実態解明を進める。 府警は昨秋にも、グリ下に立ち入っていた複数の少女をミナミのビルに住まわせて売春させたなどとして、同法違反などの容疑で男7人を摘発している。 昨年11月には大阪地裁で、不同意性交罪などに問われた男に実刑判決が言い渡された。男は「グリ下の帝王」を自称。グリ下で交流のあった女子中学生3人にわいせつな行為をしたほか、10代男性らに睡眠導入剤を売り渡すなどしたとされる。 犯罪の標的にされるグリ下の若者たち。医薬品の過剰摂取(オーバードーズ)に巻き込まれるケースもあり、ハード・ソフト両面での対策が進んできた。 令和5年には周辺に防犯カメラが設置された上、大阪・関西万博の開催を控えた今年3月には大阪市が、若者らが座り込んでいた場所を覆う巨大な塀を設置した。 塀は高さ約2メートル、長さ約17メートル。橋の下の段差部分を覆い、遊歩道にせり出すような形となっている。段差に座れなくし、道幅も狭くすることで長時間の滞在を防ぐことなどが目的だ。 ただ、グリ下での滞留を防いでも居場所のない若者を救う根本的な解決策にはならない。同市は宿泊先がない若者に対し、借り上げた民間マンションの部屋を提供するなどの支援も行うとしている。府警もグリ下周辺を巡回し、場合によっては補導している。