◇学生アメフト交流戦 日大有志の会 16―24 近大(2025年6月1日 アミノバイタルフィールド) 試合後のハドルで泣いている選手がいた。今春4戦目の初黒星。調整の意味合いが強い春シーズンは関係ない。日大有志の会にとっては、1試合、そして一瞬が勝負だからこそのリアクションだった。 昨年の甲子園ボウルに出場した法大を41―0と撃破して迎えた近大戦。ライン戦で苦戦を強いられ、シーソーゲームに持ち込まれた。第3Q3分43秒にQB川端迅(2年)がTDパスを通し13―3とリード。主導権を握ったかに見えたものの、第4Qにインターセプトのターンオーバーが響き、逆転負けを喫した。 大学から「かん口令」が敷かれており、須永恭通監督以下首脳陣、全選手はノーコメント。ハドルで、LB三ケ尻晃基主将(4年)のゲキが響いた。 「オレらが試合できるのは当たり前じゃない。それをしっかり認識しないと…。この経験を次に生かせなかったら、成長はない。勝たないと、フットボールは楽しくないから」 部内で薬物による逮捕者を出し、アメフト部が廃部に追い込まれたのが2023年12月。昨年1月に後継組織となる「日大有志の会」が誕生し、今年2月に関東学生連盟に加盟を申請した。5月にも認可され、今秋のカテゴリーが決まる予定が、まだ結論は出ていない。下部リーグから参戦するにしても、アメフトはコンタクトスポーツだけに、レベル差が思わぬ負傷を招きかねない。薬物問題を起こした日大に対する「拒否反応」も容易に想像がつく。「妥当」な解決方法を見つけるのは難しい。 愛称「フェニックス」も名乗れない、かつての名門が再スタートを切る場所は――。選手が流した涙は、ムダにできない。 <日大アメフト部の経過> ▽2023年8月5日 覚醒剤取締法違反(所持)と大麻取締法違反(所持)の疑いで日大アメフト部の3年生部員を逮捕。同部が無期限活動停止に。 ▽8月31日 学生寮を閉鎖。 ▽10月16日 新たに男子部員1人が麻薬特例法違反(規制薬物としての譲り受け)容疑で逮捕。 ▽12月15日 臨時理事会を開き、アメフト部の廃部が決定。 ▽2024年1月 後継組織の「アメリカンフットボール有志の会」が発足。 ▽2月15日 関東学生連盟から脱退。 ▽2025年2月20日 「有志の会」が関東学生連盟に加盟申請。 ▽5月18日 薬物問題発覚後、初めてとなる一般公開の対外試合を実施。昨年甲子園ボウル準優勝の法大に41―0と快勝する。