投票所で「韓国語テスト」も 中国人関与信じる「監視団」 大統領選

6月3日投開票の韓国大統領選を巡り、中国人が投票を行っているなどとする虚偽情報が拡散している。事前投票では「不正選挙監視団」を自称するグループが、投票所を訪れる人々に「韓国語テスト」を行っていたことが確認され、中国人差別を助長するヘイト行為として専門家は警鐘を鳴らしている。 韓国メディアによると、5月29~30日の事前投票の際、複数の投票所前で男性らが無断でライブ配信したり、投票所から出てきた人に話しかけたりしていた。韓国語で数字を数えるよう求めるなどしていた。「市民団体として監視しているだけだ」と説明したという。 男性らの中には、罷免された尹錫悦(ユン・ソンニョル)前大統領の支持を意味する「ユン・アゲイン」と書かれた帽子をかぶった人もいた。 また、KBSテレビによると、南東部・蔚山(ウルサン)の警察署に「中国人が投票している」との通報があった。しかし、警察が確認したところ、中国人ではなかったという。 尹氏は選挙で不正が行われた疑いがあるとして、昨年12月の戒厳令宣布を正当化した。この主張に呼応するかのように、極右メディアや右派系ユーチューバーが「戒厳軍が中央選挙管理委員会にいた中国人スパイ99人を逮捕して在沖縄米軍基地に移送した」などのフェイクニュースを伝えた。さらに、中国人の関与を指摘する情報が拡散されたが、中央選挙管理委員会はいずれも否定している。 だが、ネットでは「事前投票を監視しに行こう」「中国人を捜し出そう」といった書き込みが相次いでいる。インスタグラムには「2030不正選挙ファイターズ」という名のアカウントも存在し、「不正選挙腐敗防止隊」を募るサイトのリンクが記載されていた。 防止隊に入るためには、氏名、生年月日、電話番号、住所などを記入する必要があった。「活動希望分野」の欄には「投票参観または監視」「広報」「集会参加」といった選択肢が並んでいた。 3日の投票開始後にアカウントを確認すると、各地から寄せられる投票所の情報を掲載していた。「身分確認の際、マスクを取るようにと言われなかった」「監視カメラが投票所内にない」などと不正を疑う内容だった。 この日、記者が訪れたソウル市内の投票所では、入り口から10メートルほど離れた場所に一人の男性が立っていた。投票所から出てくる人を見ているようで、記者が近づくと立ち去った。 全北大学社会学科のソル・ドンフン教授は聯合ニュースに、関東大震災の際に日本人の自警団が、日本人と朝鮮人を発音で区別して虐殺したことに触れ「根拠なく犠牲者を探す、魔女狩りになり得ることに留意しなければならない」と批判した。【ソウル日下部元美】

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