アメリカのマルコ・ルビオ国務長官は5日、イスラエルおよびアメリカに対する「不当な」訴追を理由に、国際刑事裁判所(ICC)の判事4人に対して制裁を科す方針を発表した。 この制裁は、ICCがイスラエルのベンヤミン・ネタニヤフ首相を含む複数の高官に対して逮捕状を発行したほか、アフガニスタンにおけるアメリカの戦争犯罪疑惑に関する調査を進めていることへの対抗措置とされる。 制裁対象となったのはいずれも女性で、ソロミー・バルンギ・ボッサ判事(ウガンダ)、ルス・デル・カルメン・イバニェス=カランサ判事(ペルー)、レーヌ・アデレード・ソフィー・アラピニ=ガンス判事(ベナン)、ベティ・ホーラー判事(スロヴェニア)の4人。 米国務省によると、ボッサ判事とイバニェスカランサ判事が、アフガニスタンにおけるアメリカ人関係者に対する捜査を承認した。また、アラピニ=ガンス判事とホーラー判事の2人は、イスラエルのネタニヤフ首相およびガラント前国防相に対する逮捕状の発行を決定したとされている。 この制裁措置により、対象となった判事らがアメリカ国内に保有するすべての資産および利権が凍結され、財務省に報告されることが義務付けられる。 ルビオ国務長官は声明で、判事らが「イスラエルおよびアメリカを標的とした不当かつ根拠のない行動に関与した」と非難した。 「この4人は、アメリカおよび我々の緊密な同盟国イスラエルを標的とした、ICCの不当かつ根拠のない行動に積極的に関与してきた」 さらに、ICCは「政治的に偏った組織」で、「アメリカおよびその同盟国の国民に対し、無制限の裁量で捜査を行うという虚偽の主張をしている」と批判した。 「この危険な主張と権力の乱用は、アメリカおよびイスラエルを含む同盟国の主権と国家安全保障を侵害するものだ」とルビオ氏は強調した。 これに対してICCは声明を発表し、「今回の制裁は、世界各地の125締約国の信任を受けて運営される国際的な司法機関の独立性を損なおうとする明確な試み」だとして、「遺憾に思う」と述べた。 ICCは、「責任追及のために取り組む者を標的にしても、紛争に巻き込まれた民間人の助けにはならない」と指摘。「この制裁は、対象となった個人だけでなく、裁判所を支える全員をも標的としている(中略)これは、ICCが扱うすべての事案における、罪のない被害者を標的にしたものであると同時に、法の支配、平和、安全保障、そして人類の良心に衝撃を与える最も深刻な犯罪の防止をも、標的にしている」と批判した。 ICCはさらに「職員を全面的に支持」するとして、「戦争犯罪や人道に対する罪、ジェノサイド(集団虐殺)、侵略の罪による被害者に正義を実現することを目指し」、「ローマ規定および公正と適正手続きの原則に厳密に沿った形で、妨げられることなく職務を継続する」と表明した。 ■今年2月にも経済制裁 ICCは、ジェノサイド、人道に対する罪、戦争犯罪について訴追権限を持つ国際的な司法機関。 昨年には、パレスチナ・ガザ地区における戦争犯罪の疑いで、イスラエルのネタニヤフ首相やヨアヴ・ガラント前国防相に対する逮捕状を発行した。 また、イスラム組織ハマスの軍事部門トップだったモハメド・デイフ司令官にも逮捕状が出されたが、ハマスはその後、デイフ氏が昨年の空爆で死亡したと認めている。 ICCの判事らは、イスラエルとハマスの戦争に関連して、3人に「戦争犯罪および人道に対する罪に関して刑事責任を負う合理的な根拠がある」と判断した。 これに対し、イスラエルおよびハマスの双方は、ICCの訴追内容を否定している。 アメリカのドナルド・トランプ大統領は今年2月、ICCに対する経済制裁を発動。対象には、カリム・カーン主任検察官などが含まれていた。トランプ氏は、ICCが「権限を乱用している」と非難した。 (英語記事 Rubio sanctions ICC for 'targeting' Israel and US)