市長の側近2人射殺で「安全神話」崩れるメキシコ市、装甲車需要が急増

先月20日、メキシコ市長の側近2人が白昼の幹線道路で、射殺される瞬間が防犯カメラに捉えられていた。市長の秘書と補佐官が殺害されたことで、暴力事件が多発するメキシコにあっても、メキシコ市は安全だという「治安神話」が崩壊した。メキシコは世界で最も殺人発生率の高い国の1つだが、これまで暴力事件の多くは首都以外の地域で起こっていた。 今回の襲撃事件は、犯罪組織からメキシコ市長への「メッセージ」だと指摘する声もある。つまり、自分たちの邪魔をするなという脅しだ。 メキシコ市で州政府や企業へ防犯上の助言を行う専門家は、こう話す。 セキュリティ専門家 ダビド・サウセドさん 「間違いなく、今回の事件はメキシコ政府、あるいは政府とメキシコ市当局が協調して実施した何らかの治安戦略に対する報復だ」 サウセドさんはまた、事件の発生時刻がシェインバウム大統領の朝の記者会見の最中であったことに着目。会見では、複数の州における犯罪組織の逮捕や武器押収についての成果が発表されていた。 市当局およびメキシコ政府は、本件に関するコメント要請に応じていない。 メキシコ市がビジネスや観光地として魅力的であるには、安全性が極めて重要だ。しかし最近、富裕層の市民はさらなる安全策を導入している。例えば装甲車の購入だ。 装甲車の専門家であるバウティスタ・セスタウさんはこう話す。 装甲車の専門家 バウティスタ・セスタウさん 「戦術車両の需要は著しく増加している。戦術用に限らず一般向け車両も含め、レベル3からレベル5まで、政府機関からの要望が多い。実際に攻撃が多発しており、標的型の直接攻撃が増えているからだ。防弾車の政府向け需要はかなりの割合で増加している」 メキシコ市のブルガダ市長は、犯罪との戦いを続ける姿勢を崩していない。しかし安全保障の専門家は、市長がジレンマに陥っていると指摘する。すなわち、事件を処罰せずに済ますことはできない一方で、強硬な対応をとれば、犯罪組織による報復を招きかねない。こうした対応の難しさは各地でみられ、国としての治安戦略の根幹が問われている。

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