宮崎県日南市の中心部から車で20分。山間部にある酒谷地区では、昨年10月の台風で市道が約9メートルにわたって崩れた。えぐれた斜面に土のうを積み、鉄板をかぶせた“応急処置”のまま、半年がたった。 町と集落をつなぐ唯一の生活道路。近くに住む男性(76)は「この道が壊れたら集落は孤立する。早く直してもらわないと安心して暮らせない」と話す。 復旧が進まないのは、この場所だけではない。別の市道も昨秋の線状降水帯による大雨で約10メートル崩壊し、道幅が半分になったままだ。地元の自治会役員がその理由を市の担当者に尋ねると、歯切れの悪い答えが返ってきた。「(復旧工事の)入札をしても、落札されるかどうか分からない」 副市長の田中利郎被告(68)が官製談合防止法違反容疑などで逮捕された2021年1月以降、市では公共工事に遅れが相次ぐ。工事を発注しても業者が落札したがらないからだ。入札がまとまらない「不調不落」の件数は20年度の8件から、21年度32件、22年度43件、23年度は73件まで増えた。 折からの人手不足や資材高騰に加え、事件後、市が行った入札制度の変更が不調不落を招く大きな要因になっている。